いけだ内科循環器クリニック

札幌市東区本町の内科,循環器内科 医療法人いけだ内科循環器クリニック

〒065-0041 北海道札幌市東区本町1条7丁目1-46
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院長のコラム

花粉症のお話し(2020年4月)

 新型コロナウイルス感染症が遷延しています。今のところ早期診断のための簡易検査や治療薬がない状況です。熱が出た時などは診断もつかず心配された方も多いのではないでしょうか。自分の体も心配ですが家族や職場など周囲の人にうつすのではといった不安も大きいのだと思います。外出の自粛やマスクの着用など色々な対策をされていると思います。当院では午前中の外来混雑緩和の為健康診断の受付を午後15時以降にし、院内ではアルコール手指消毒の励行や咳の出る方へのマスク着用、定期的な換気などの対策を行っています。今後も皆様のご協力をお願い致します。
 さて話は変わりますが皆さんの中に毎年この季節になると、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が続く方はいませんか?天気が良い日に限って鼻がムズムズ・涙が止まらない人はいませんか?それらは花粉症の可能性があります。花粉症とは、花粉に対して体が起こすアレルギー反応で、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった三大症状が風邪の症状と似ているために気づかれないこともありますが、くしゃみが連続してでる、目の充血やまぶたの腫れ・かゆみ・涙目が多いという目の症状や、のどのかゆみやイガイガ感などの症状が有れば花粉症を疑います。本州では花粉症と言えばスギ花粉症ですが札幌では春の花粉症の主な原因はハンノキ・シラカバ花粉です。もう札幌では2月の時点でハンノキや本州由来のスギ花粉の飛散が確認されています。去年の札幌のシラカバ花粉の飛散開始は4月22日とやや早く、去年の夏の気象から推測して今年は全道的にシラカバ花粉が多く飛散することが予想されています。まさにこれからが花粉の飛散の本格的な時期ですね。また昨年まで何の症状もなかった人が今年になって花粉症になることもあるので注意が必要です!
 花粉症の診断は花粉の飛ぶ時期に症状が有るかどうか、血液検査で花粉に対する抗体があるかどうかで診断されます。治療はアレルギーを抑える薬の内服が基本で鼻に噴霧する薬や目薬を使用することもあります。花粉症の人はシーズンが始まる1~2週間前から薬を飲み始めると症状を軽く出来るので早めに病院を受診し治療を始めることが大切です。花粉症が悪化してから治療を開始しても改善までに時間がかかります。アレルギーの薬は一般的に効果が強いと眠気が起きやすいのですが、最近は眠気が少なく効果も良いアレルギーの薬があります。眠気が心配な人は医師に相談することをお勧めします。花粉症対策としてはマスクの着用や眼鏡・ゴーグルなどを使用しましょう。外出からの帰宅時には家に入る直前に上着をはらい直ぐに着替えます。洗顔やうがいの励行も効果が期待できます。また花粉を防ぐために洗濯物を部屋干しにする、掃除では特に床を拭くとよいでしょう。
 さて花粉症の人の中にリンゴやモモ、サクランボなどの果実を食べると舌やくちびるがはれる、のどがかゆくなる口腔内アレルギーの方がいるのをご存知ですか?この口腔内アレルギーは花粉の原因物質と似た物質が果実などの中にあり、果実などを摂取後数分から15分くらいで舌やくちびるの症状が出ます。花粉症の時期に原因となる食べ物を取ると症状が悪化することが多いと言われていますが通年性で症状が出る人もいます。対策は症状の出やすい時期を知り、原因となる果物などの食べ物を避けることです。花粉症や口腔内アレルギーが疑われる方は血液検査で花粉や原因となる果実に対するアレルギー反応を検査することをお勧めします。当院では花粉症の血液検査を実施しています。花粉症は仕事や勉強の効率・集中力の低下の原因となり重症になると不眠症になることもあります。きっちり対策を立てて花粉症に悩まずに仕事や勉強に頑張りたいですね!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

インフルエンザの予防と手洗い(2019年12月)

 インフルエンザの流行に注意して下さい!
寒い日が続いていますが、11月の札幌では例年より早くインフルエンザの流行が目立っています。東区では10月に早くも小中学校で学級閉鎖や学校閉鎖が行われました。例年では12月頃から流行入りになるので今年は非常に早い流行入りといえます。そこで今回はインフルエンザの予防と手洗いについてお話しします。
インフルエンザの感染を防ぐにはインフルエンザウイルスを体の中に入れないことと自分の免疫力を保つことです。家族や職場でインフルエンザの流行があるとどうしても感染の可能性が高くなってしまいます。ではどうやってウイルスは体の中に入ってくるのでしょうか?それは主に飛沫(ひまつ)感染と接触感染の二つの感染経路が考えられます。飛沫感染とは、感染した人が咳やくしゃみをするとウイルスを含んだ飛沫が飛び散り、それを他の人が口や鼻から吸い込み感染することを言います。接触感染とは感染した人が咳をする時に手で押さえたり、鼻水を手でぬぐったりした後にドアノブや机などに触れるとそこにウイルスが付きます。その場所を他人が手で触れ、その手で口や鼻を触れるとそこからウイルスが入り感染するのが接触感染です。ウイルスが目に見えれば対策も簡単かもしれませんが、そうはいかないですよね。そこで色々な対策を行って予防することになります。
①うがい・手洗い うがい・手洗いは外出後が重要ですが食事の前や就寝時にも行いたいですね。うがいは2種類でするのがお勧めです。先ず口の中全体をクチュクチュとよく洗い、次にガラガラとのどの奥を洗います。各三回くらいずつ長めに行うと効果があがります。予防であれば水道水のうがいで十分です。手洗いはインフルエンザに限らず感染予防の基本で、手指に付いたウイルスを洗い流します。まず流水で全体を十分に濡らし薬用せっけんなどを使って手のひらだけでなく指先や指の間(特に親指の周囲)手首などを洗い30秒ほど時間をかけるのが理想です。最後に重要なのは手を拭く際にペーパータオルなどを使う事で、家族共有の手ぬぐい・タオルは使わないようにしましょう。家族でタオルを共有するとタオルを通じて接触感染が起きる可能性が高くなります。
②ワクチンの接種 ワクチンは接種してから効果が出るのに2週間から4週間が必要です。流行が早い時は早めのワクチンの接種が理想的です。
③マスクの使用 飛沫感染の予防として使います。鼻・口あごまでをしっかりと覆うことが大切です。マスクの表面を触ったり使い回しはダメです!そこから接触感染が起きるかもしれません。またマスクはウイルスの侵入をブロックするだけでなく、のどや鼻の乾燥を防ぐ効果も期待できます。
④湿度を適度に保つ 空気が乾燥すると、のどの粘膜も乾きウイルスなどへの防御力が落ちてしまいます。
⑤休養・睡眠を十分にとる 疲労がたまっていると抵抗力も落ち風邪などにかかりやすくなります。
⑥人混みを避けましょう イベントや大型商業施設など多くの人が集まる場所ではどうしても感染の機会が多くなります。
⑦もしかかったら 咳エチケットをしましょう 咳エチケットとは、咳が出ている時は他人にうつさないようにマスクを着用し、マスクがない時はハンカチなどで口と鼻を押さえる、鼻水やたんの付いたティッシュはすぐに捨てる、この様なマナーの事を咳エチケットと呼んでいます。インフルエンザや風邪にかかった時は周囲に感染を広げないためにも咳エチケットを心がけたいですね!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

熱中症のお話し(2019年8月)

 もうすぐお盆ですから外出する機会が増えてきますね。去年の夏は生命に危険を及ぼす猛烈な暑さという言葉がテレビで繰り返されていました。今月は熱中症について、熱中症はどのような症状があるのか?どのような状況で起きるのか?熱中症にはどう対処するのか?などをお話ししたいと思います。
 熱中症とは、暑い環境の中で体がうまく対応できずに様々な症状を起こす状態を指します。以前は日射病や熱射病などと呼ばれていました。暑い場所に居た時だけではなく、暑い所にいた後の体調不良も熱中症の可能性があります。それではどういう症状が出るのでしょうか?①めまい、立ちくらみ、大量の汗、筋肉の痛みやこむら返り②頭痛、吐き気や強い倦怠感を感じることもあります、このような症状がある時は熱中症を疑います。熱中症の起きる時期は7月中旬から8月上旬にかけての真夏がピークとなっています。猛暑の年で何回か暑さのピークがある時は暑さが最初のピークの時に患者数が多く救急搬送される重症者も多くなります。熱中症の起きやすい時間帯は午後12時から15時前後の日中が最も多くなっていますが、熱帯夜のように夜間も気温が下がらない時は夜でも要注意です。皆さんは熱中症はどういう状況で起こりやすいと思いますか?スポーツをしている時や、肉体労働中に多いというイメージでしょうか。確かに野球や陸上競技などグラウンドでのスポーツは重症になりやすい傾向があり、仕事中では農業、土木、建築業などの肉体労働で頻度が高くなります。また高温多湿な場所や飲水の機会が少ないと熱中症を起こしやすくなります。しかし猛暑では体を動かしていなくても熱中症の危険があります。例えば屋外でのスポーツ観戦や応援、お祭りやイベントへの参加などでも熱中症は起きています。また冷房のない屋内・室内でも注意が必要です。特にご年配の方は普通の日常生活の中で起きている熱中症が多く、意外に思うかもしれませんが家の中で起こっています。スポーツの時に起こる熱中症が急速に症状が進むのに対し高齢の方の場合はゆっくりと症状が進むため自分でも熱中症の自覚がなく対応が遅れる危険性があります。なかでも一人暮らしの方や認知症などの持病があれば重症化しやすくなります。年齢が上がってくると①暑さを感じにくい②口の渇きを感じないという体の変化が起きてくるので、自分では熱中症の危険性に気づかれていません。ご家族やまわりの人は①積極的に水分を勧める②涼しい服装に着替えてもらう③冷房を適切に使うなどの注意が必要だと思います。話を聞くだけではなく出来れば実際に住んでいる部屋の状況を確認してみて下さい。
 もしあなたのまわりの人が熱中症になった時はどうしますか?①まず意識がはっきりしているかを確認します。反応が鈍ければ救急車を呼んで下さい。②意識がしっかりしていれば涼しい場所へ移動させ衣服をゆるめ体を冷やします。体に水をかけたり、保冷剤などを使い首やわきの下、足の付け根を集中的に冷やします。③水分を取らせます。自力で水分を取れないときは病院を受診して下さい。水分だけではなく出来れば塩分も補給します。スポーツドリンクや経口補水液が良いでしょう。④症状が改善していけばひと安心です。それでは熱中症に注意して短い北海道の夏を楽しみたいですね!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

高血圧症のお話し(2019年6月)

 先日新聞紙上に高血圧症の降圧目標を厳しく設定という記事が載っていました。記事を読まれて関心を持った方も多いのではないでしょうか。今回は高血圧症のお話しです。
 現在日本人の実に4300万人の方が高血圧症と考えられています。
この中で約半数の人が薬による治療を受けていますが、その治療中の方でも約半分の人は十分に血圧が下がっていない、降圧目標に到達していないという現実があります。十分に血圧が下がっていないという事は、脳梗塞や脳出血などの脳疾患、心筋梗塞や心不全、大動脈瘤などの心臓・血管の病気の危険性が高まります。今回の降圧目標を厳しくすると言う提案は日本高血圧学会からの提案です。これは日本のみならず海外の最新の研究や報告を参考に5年ぶりに見直されたものです。目的は今の日本人に最適な血圧の目標を示し、きちんと目標値まで血圧を下げることで心臓や脳の病気を予防し健康寿命を伸ばすことにあります。
 ではどのように血圧の目標値が変わったのでしょうか?今までの降圧目標は上の血圧が140未満、下の血圧が90未満でしたが、今回の指針では上の血圧が130未満、下の血圧が80未満と、上下ともに10ずつ引き下げ厳しくなっています(合併症のない75歳未満の方が対象)。先ほど話したように高血圧を治療中の約半数の人は十分に血圧が下がっていない現状があります。降圧目標に達しない理由・原因は様々な事が考えられますが、下記に注意点をあげてみたいと思います。①処方された薬を指示通りに服用しているかどうか:複数の薬の処方が出ている方も多いと思いますが、自分で調節せず指示通りに服用しましょう ②薬の飲み忘れはないかどうか:医師から指示された時間に仕事などの都合で飲めない場合、また就寝時に処方されているがどうしても飲む前に寝てしまうなど、飲み忘れがある事を医師に伝えましょう ③禁煙:喫煙後は5~10程度血圧が上昇します。1日20本の喫煙習慣がある方は1日20回自分で血圧を上げていると考え禁煙しましょう ④食塩の過剰摂取:指針では1日の食塩摂取量を6グラム以下としています。例えばラーメン一杯に含まれる食塩量は5グラム程度であることを考えるとこれはかなり厳しい目標ですね。普段の食生活で麺類の汁は残す、塩分の少ない調味料を使用する、薄味に飽きれば酸味など他の味付けでカバーするなど食生活での工夫も必要です ⑤睡眠時間:短い睡眠時間は翌朝の血圧を上げるので十分な睡眠時間を取りましょう。朝の血圧が極端に高い人や血圧の変動の激しい人は睡眠時の無呼吸に注意です。いびきが酷い人や家族に呼吸が止まっていると言われたことがある場合は睡眠時無呼吸の可能性がありますので耳鼻科など専門病院を受診しましょう。また夜勤があるなど仕事の時間が不規則な場合も血圧が安定しづらくなるので医師に伝えましょう ⑥飲酒:お酒を飲んだ直後は一時的に血圧が下がりますが習慣的な過度の飲酒は血圧を上げます。週2日の休肝日を作り適量を心がけましょう。飲み過ぎは夜間何度も排尿に起きる、いびきが酷くなるなど睡眠の質を悪くし翌朝の血圧を上げるので要注意です ⑦肥満の解消:肥満がある場合に体重を落とすと血圧の低下が期待できます ⑧運動習慣:体を動かすことを毎日継続することが血圧低下につながります。体力のある方はちょっと息が上がる程度の有酸素運動が有効です。運動する時間のない方も毎日の通勤を車から公共交通機関に替えたり、階段を積極的に使ったり工夫次第で運動になります。ちょっとした事でも毎日の継続が重要です。
 最後に正常血圧とは上が120未満かつ下が80未満(120/80)です。この正常血圧120/80を超えてくると脳卒中や心臓病になる危険が増えてくるため、自分はまだ140/90以下だから大丈夫と考えるのではなく今から自分の生活習慣を見直し高血圧症の予防につなげていく事が大切だと思います。なお高血圧症と診断する基準は従来と同じで、上は140以上、下は90以上のいずれかに該当すると高血圧と診断されます。今回のお話が皆さんの生活習慣を見直すきっかけになれば幸いです。


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

風疹(ふうしん)の抗体検査について(平成30年12月)

 現在関東を中心に風疹が流行し、札幌でも例年より多くの感染が確認されています。風疹はワクチン接種により予防出来ますが、ワクチン未接種の人や抗体価の低い人は風疹にかかる可能性があります。今回は札幌市の風疹の抗体検査のご案内と先天性風疹症候群・ワクチンについてお話ししたいと思います。
 風疹は発熱・発疹・リンパ節の腫れを特徴とするウイルス性発疹症です。風疹は「3日はしか」とも言われるように子供がかかった時の症状は比較的軽症ですが、風疹の最大の問題は妊娠初期の妊婦さんが風疹にかかると生まれてくる赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気にかかることです。先天性風疹症候群とは生まれつきの心臓病、白内障、難聴といった色々な障害をもってしまう病気です。この先天性風疹症候群を予防する為に大切な事は、妊娠前に風疹の抗体を持っていることです。風疹の抗体があるという事は過去に風疹にかかっている又はワクチン接種により免疫が有るということで風疹にかかる可能性は低くなります。これに対し風疹の抗体が無い場合は風疹にかかっていない、ワクチン未接種又はワクチンを接種していても既に免疫が低下していることになり風疹にかかる可能性があります。皆さんは平成25年に首都圏と関西を中心に風疹が大流行したのを覚えていますか?この年の風疹流行の多くが20歳から40歳代の男性でした。これは何故でしょうか?実は風疹のワクチン接種は年齢や男女によって受けている人と受けていない人がいるからなのです!風疹ワクチンは中学生の女子を対象に学校での集団接種として始まり、次に男子にも接種が始まりましたが、集団接種を止め個別接種に変更されて以降接種を受ける人が減り、結果抗体保有率も減少しました。具体的には平成2年4月以降に生まれた男女は公費で2回ワクチンを受ける機会がありましたが、昭和37年から平成元年生まれの女性および昭和54年から平成元年生まれの男性は接種していても1回のみです。そして昭和54年4月以前に生まれた男性は風疹のワクチンを1回も受ける機会がないので自然感染を受けた以外は免疫がないことになります。ワクチンの接種歴はご自分の母子手帳で確認できますが、その接種歴が不明の人は風疹の抗体価を調べる必要があります。
 それでは札幌市の風疹の抗体検査について説明します。対象者は札幌市に住所のある以下の方になります。
①妊娠を予定または希望している女性
②風疹の抗体の検査で抗体価が低いと診断された妊婦さんの配偶者
 (注意)過去に風疹の抗体検査を受けたことがある方、風疹にかかったことがある方、風疹の予防接種を受けている方は対象外となります。
風疹の抗体検査は血液検査を行います。費用は上記の条件を満たす方は無料です。検査を実施している医療機関は札幌市コールセンター(222-4894)などで案内しています。当院でも実施が可能です。風疹はワクチン接種で予防が出来る病気です。先天性風疹症候群を予防するためにも風疹の抗体価を検査し、抗体がない場合はワクチンの接種が必要です。ワクチン接種により95%以上の人が免疫を獲得します。現在風疹の単独ワクチンが不足しているため、麻疹風疹の混合ワクチンを接種することも可能です。なお風疹のワクチンは生ワクチンのため妊娠中の人は接種出来ず、また接種後は2ヶ月間の避妊の必要があります。
 当院では風疹の抗体検査とワクチンの接種が可能です。抗体検査を希望される方は運転免許証や健康保険証などの住所を証明する書類(妊婦の配偶者の方は妊婦の母子健康手帳)を持参のうえ直接クリニック窓口にてお申し付け下さい。なおワクチンの接種には予約が必要ですから、ご希望の方は当院までお問い合わせ下さい。


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

後鼻漏のお話(平成30年9月)

後鼻漏(こうびろう)を知っていますか?

 9月になり朝晩が肌寒いと感じる今日この頃、季節の変わり目は喘息やアレルギー症状が悪化しやすい季節でもあります。今月はアレルギー性鼻炎による鼻水が、ノドの痛みやイガイガ感、咳・痰の原因になるというお話しをしたいと思います。

 花粉症・アレルギー性鼻炎や喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患は年々患者さんが増えています。花粉症は花粉が原因となるため季節性があります。札幌では春のシラカバ花粉が有名ですが、夏にはカモガヤなどのイネ科の花粉が飛散し、秋にもヨモギなどの花粉が飛びます。季節によって症状が出る花粉症に対してアレルギー性鼻炎では一年を通して鼻の症状が出る可能性があります。家の中のダニやハウスダスト(ホコリのことです)ペットの毛やフケ・カビなどが原因となり鼻の症状を起こすのがアレルギー性鼻炎です。アレルギー性鼻炎は日本人において約40%の人がかかっているとも言われます(鼻アレルギー診療ガイドライン2016より)。花粉症と通年性のアレルギー性鼻炎の両方を持っている人もいます。アレルギー性鼻炎の症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまりですから花粉症の症状と似ていますね。このアレルギー性鼻炎の症状が最も出やすいのが朝です。理由として①朝は気温が低く鼻水が出やすい②寝ている間に鼻水がたくさん溜まる③自律神経の影響などが考えられます。高齢の方ではアレルギー性鼻炎と診断されずに風邪だと思い込み、治療を受けられていない人が多いようです。風邪だと思う理由には鼻水の他にノドの痛みや咳・痰などの症状があるからだと思われますが、花粉症やアレルギー性鼻炎でもノドや咳・痰などの症状が出てきます。熱もないのに痰が出る、ノドの奥に何か張り付いたような感じがする、痰を出そうとして咳払いが多い人は後鼻漏(こうびろう)が原因かもしれません!

 この後鼻漏とはどういう状態なのでしょうか?鼻漏とは鼻水のことです。鼻水は健康な人でも1日に2リットル以上が作られ、その約3割は鼻の後ろからノドに流れ落ち、本人が知らないうちに無意識に飲み込んでいます。これが後鼻漏です。後鼻漏があること自体は病気ではなく、後鼻漏は健康な方でも起きているのです。普通鼻水は鼻の穴から外に出ていきますが、後鼻漏が原因で炎症が起こると鼻水の刺激により①ノドの違和感やイガイガ感②よく咳払いをするなどの症状を起こし、重症になると不眠症の原因にもなりえます。しかしこの後鼻漏を知っている人、自覚している人が非常に少ないのです。花粉症やアレルギー性鼻炎の患者の多くにこの後鼻漏の症状が有ると言われます。花粉症やアレルギー性鼻炎の人が、鼻水がノドに落ちこみノドが痛いヒリヒリする・痰が多いと思っている症状は風邪ではなく後鼻漏が原因かもしれませんね。花粉症やアレルギー性鼻炎が疑われる方は血液検査で花粉やダニ、ハウスダストなどに対するアレルギー反応を検査することで診断が可能です。花粉症やアレルギー反応の血液検査は当院でも実施しています。


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

睡眠のお話し 心がけたいこと(平成30年2月)

睡眠のお話 世代別に心がけたいこと
 先月は睡眠についてお話ししました。適切な睡眠は心身の健康にとって大切であること、そして睡眠不足は血圧の上昇や糖尿病の血糖値不良など生活習慣病の悪化を招くことなどでした。皆さんは体内時計という言葉を聞いたことがありますか?人は約24時間周期の体内時計のリズムをもっています。このリズムにより体が活動的になる時間や眠くなる時間などが決まってきます。人は本来、日中活動して夜に休息するリズムをもっています。体内時計のリズムを整えると睡眠の質が良くなります。そこで今回は世代別に良い睡眠を得るポイントをお話ししようと思います。

①勤労世代 疲労回復に十分な睡眠時間を。短時間の昼寝もおすすめ!
 勤労世代では十分な睡眠を確保する必要があります。睡眠不足は注意力や作業能率を低下させ、事故やヒューマンエラーの危険性を高めます。自分では眠気による作業能率の低下に気が付かないこともあります。睡眠不足が長く続くと疲労回復は難しくなります。睡眠不足を補うため休日にまとめて「寝だめ」する人がいます。しかし沢山眠っておくとその後の睡眠不足に耐えられるということはなく、睡眠を貯めることはできません。また休日に遅い時刻まで眠っていると、日曜の夜の入眠困難や月曜の朝の目覚めの悪さにつながります。睡眠不足で眠気が気になる時は午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝をすることが効果的です。

②熟年世代 早い時刻から寝ようとしない!
 高齢になると必要な睡眠時間が短くなります。具体的には20歳代に比べ65歳では必要な睡眠時間が約1~2時間少ないと考えられています。夜中に目が覚め朝まで眠れない原因の一つに早すぎる就寝時刻があります。必要な睡眠時間を6時間とすると夜9時に寝ると夜中の3時にはその時刻となります。したがって就寝時刻を見直しあまり早い時刻から寝床で過ごさないことが大切です。寝床で過ごす時間が長いと睡眠が浅く夜中に目覚めやすくなり熟睡感が得られません。また日中の長い昼寝は夜間の睡眠を浅く不安定にするので30分程度にすると良いでしょう。一方で日中に適度な運動を行うことは睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけ、中途覚醒を減らし熟睡感の向上につながります。また運動は睡眠への恩恵のみならず、加齢により低下する日常生活動作の維持・向上や、生活習慣病の予防にもなります。無理をしない程度の軽い運動を日頃から心がけるとよいでしょう。

③若年世代 規則正しい生活で体内時計のリズムを保つ。寝る前のスマホやゲームは朝起きられない原因に!
 思春期になると子どもは夜ふかしをするようになります。思春期から青年期にかけては睡眠の時間帯が遅れやすい時期ですが、さらに通学時間が長いことや部活動などにより、こうした傾向が助長されます。若年世代では平日と比べて休日の起床時刻が2~3時間程度遅くなることが判っています。これは平日の睡眠不足を解消する意味がありますが、一方で体内時計のリズムを乱すことから登校日の朝の起床を困難にします。こうした休日の睡眠スケジュールの遅れは夏休みなどの長期休暇後に大きくなります。体内時計は起床直後の太陽の光を手がかりにリセットされ一日の時を刻んでいます。光による朝のリセットが毎朝起床直後に行われないと、その夜に寝つくことのできる時刻が少しずつ遅れます。夜型化してしまう原因は朝に暗いままの寝室で長い時間過ごすことで、起床直後の太陽の光による体内時計のリセットがうまく行えないことにあります。また夜更かしを繰り返すと体内時計がずれ朝起きられない原因になります。寝床に入ってからのスマホやゲームも控えたいですね。

 勤労世代は十分な睡眠を、熟年世代は寝床に早く入らない、若年世代は寝る前のスマホの使いすぎなど、自分の習慣と環境を見直すことで良い睡眠が得られると良いですね!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

睡眠のお話し(平成30年1月)

 新年明けましておめでとうございます。当クリニックも開院後早いもので今年10年目を迎えます。今後も地域の皆様に信頼していただける温かい診療を目指していきたいと考えています。本年もどうぞよろしくお願い致します。さて今年最初のお話は睡眠の話題です。私が外来で診察する中で 先生眠れないから睡眠剤を処方して下さい、という相談をよく伺います。内科の先生が睡眠の話?と思われるかもしれませんが、睡眠は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と密接な関係があります。今回は良い睡眠を得るために心掛けたい生活習慣についてお話ししたいと思います。

 睡眠には心身の疲労を回復する働きがあります。先程睡眠は血圧や糖尿病と関係があると言いました。例えば睡眠時間が短いと翌朝の血圧が上がり、睡眠の質が悪いと糖尿病の血糖値が悪くなるという事が分かっています。また不眠がうつ病のような心の病気につながることや睡眠不足による日中の眠気がヒューマンエラーに基づく仕事上の事故や交通事故につながることも明らかになっています。睡眠について正しい知識を身につけ、自分の睡眠を見直して十分な睡眠の確保、睡眠の質の改善、睡眠障害に早めに対応することによって心と身体の健康を目指しましょう。

 ところで皆さんは適切な睡眠時間はどれ位だと思われますか?一般的には6〜8時間といわれていますが、最近の調査では日本人の平均睡眠時間が年々短くなっていて6時間未満の人が増えています。それでは健康的な睡眠を得るために生活習慣で気をつけたいことを以下にあげてみましょう。

 1:適度な運動、しっかり朝食をとり眠気と目覚めのメリハリを。
 適度な運動を習慣づけることは入眠を促し中途覚醒を減らします。また朝日の光を浴びて、しっかり朝食をとることは朝の目覚めを促します。これらの習慣は睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけることになります。一方で寝る前のお酒やタバコ、夜食は入眠を妨げ睡眠の質を悪くします。お酒は入眠を一時的には促進しますが中途覚醒が増えて睡眠が浅くなり熟睡感が得られません。タバコのニコチンには覚醒作用があるため就寝前には避けたいところです。カフェインも同じように覚醒作用があるため入眠を妨げ、また利尿作用により夜中にトイレで目がさめる原因にもなります。カフェインはコーヒーや緑茶、栄養ドリンク剤やエナジードリンクなどに多く含まれていますから就寝3〜4時間前は控えた方が良いでしょう。

 2:良い睡眠には環境作りも重要
 寝室や寝床の中の温度や湿度も重要です。暑くても寒くてもいけません。例えば入浴はぬるめの温度でゆっくりリラックスしてがオススメです。また明るい光には覚醒作用があるため部屋を適度に暗くすることが大切です。テレビをつけたままや就寝前のパソコンやスマホも控えた方が良いでしょう。

 3:必要な睡眠時間は人それぞれ
 夜間に実際に眠ることの出来る時間は加齢と共に徐々に減っていきます。10歳代は8時間以上なのに対して65歳では6時間です。昔から年をとると早寝早起きの傾向が強まり朝型化することが特に高齢男性で強いことが分かっています。長く睡眠をとったからといって健康になるわけではありません。年をとり睡眠時間が短くなることはけっして病気ではなく自然であること、日中に眠気で困らない程度の自然な睡眠が一番であることを知っておくと良いでしょう。健康に理想的な睡眠時間や睡眠のパターンは年齢や世代、仕事の内容や生活環境によって異なります。来月は世代毎に分けて良い睡眠を得るためのポイントをお話ししますね。

 睡眠剤を病院で処方してもらう前に、ご自分の生活習慣と環境を一度見直すことで少しでも良い睡眠が得られると良いですね!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

糖尿病のお話し(平成29年12月)

 皆さんは11月14日が何の日か知っていますか?約1ヶ月前の事ですが札幌のテレビ塔などが青色にライトアップされました。その日は世界糖尿病デーでした。今年最後のお話は日本でも増加している糖尿病のお話です。

世界糖尿病デーは世界で増加している糖尿病の脅威に対応するため世界保健機関が定めた国際デーでインスリンの発見者フレデリック・バンティングの誕生日に当たる日です。
日本の国民栄養調査では糖尿病の治療中の人と糖尿病が強く疑われる人が2016年初めて1000万人の大台に乗りました。糖尿病の可能性を否定出来ない人も1000万人で合わせると2000万人です。
成人の人口が約1億人なので現在の日本人成人の5人に1人が糖尿病の治療中または糖尿病に注意が必要ということです。

中でも気になるのが高齢な方の糖尿病が非常に増えている点です。糖尿病が強く疑われる人の割合を20年前と比べてみましょう。
平成9年は50歳台は14.2%、60歳台17.5%、70歳以上では11.3%です。平成28年では50歳台は12.6%と減少していますが60歳台は21.8%、70歳以上では23.2%と20年前に比べて倍以上に増えています。車やコンビニの普及などによる運動不足と食べ過ぎ・夜遅い食事などの生活習慣の変化が原因と思われます。

皆さんはインスリンを知っていますか?糖尿病の治療に用いられるインスリン注射のインスリンの事です。
インスリンは血糖値を抑制する為にお腹の臓器である膵臓(すいぞう)から出ているホルモンです。このインスリンのお陰で私達の体の中の血糖値は常に一定範囲の中に調節され血糖値が高くなるのを防いでいます。
しかしこのインスリンの働きが悪くなると血糖値が上がってきます。そして血糖値が高い状態を放置すると糖尿病になります。しかし急に糖尿病になる訳ではないですよね?正常の血糖値の状態から糖尿病になる間の状態があるはずです!それが境界型糖尿病又は糖尿病予備軍です。
皆さんの中で血糖値が少し高いようですが糖尿病ではないですよ、などと健診で説明を受けた事はありませんか?健診での採血は通常空腹時の血糖値を見ます。実はここがポイントなのです。糖尿病の前の段階つまり境界型糖尿病では空腹時の血糖値はあまり上がらず食後の血糖値が上がってきます。この食後の血糖値の上昇は初期の頃は比較的速やかに下がるので非常に発見しにくいです。境界型糖尿病が診断されにくい理由がここにあります。

血糖を制御するインスリンの働きが悪くなるのには大きく2つの原因があります。
①一つはインスリンが 膵臓から十分に出ないこと
②二つ目はインスリンの効き目が悪くなる事です。

①のインスリンの量に関して日本人は欧米人に比べインスリンを出す力が元来弱いということ。そして年齢と共にインスリンの量が減ってきます。
②のインスリンの効き目が悪くなる原因は肥満・運動不足や加齢による筋肉量の減少などが原因となります。

では具体的にどういう人が糖尿病に注意が必要か挙げてみます。当てはまる項目が多ければ多いほど要注意です!
①尿検査で糖が出た
②血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエイワンシ−と読み2ヶ月間の血糖値の平均値を表し糖尿病の診断や治療に使われます)が高いと言われた
③両親や兄弟に糖尿病が多い
④血圧やコレステロールが高い又は治療中である
⑤健診でメタボと指摘された
⑥以前に比べ10㎏以上太った
⑦夕食の時間がいつも遅く食べすぎる方だ、などです。

糖尿病の初期では自覚症状が出る事はあまりありません。血液検査など検査を行わないと糖尿病の危険つまり血糖値が高いかどうかは解らないのです。勤務先の検診や札幌市の特定健診(とくとく健診)を利用して血糖値を調べてみましょう。出来れば過去の健診結果がどう経過しているのかを確認すると良いですよ!


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

肺炎球菌ワクチンについて(平成29年10月)

 皆さんは肺炎を予防するワクチンの接種に札幌市から助成が出ているのをご存知ですか?8月から9月にかけ助成の対象者に市から案内の手紙が届いていると思います。対象者は65歳70歳など65歳から5歳きざみで100歳まで設定され、過去に肺炎球菌ワクチンを受けたことがない方が対象です。今回は肺炎を予防する肺炎球菌ワクチンのお話しをします。
 肺炎は現在日本人の死因の第3位であり、肺炎による死亡者の95%は65歳以上の人です。この肺炎の予防にワクチンが有効で現在65歳以上の対象年齢の方は助成を受けることで少ない自己負担でワクチンを接種出来ます。そこで今回はよくお問い合わせのある肺炎球菌ワクチンに関する疑問・関心事をQ(質問)& A(答え)でお話しします。

Q:肺炎球菌ワクチンとはどういうものですか?
A:肺炎の原因になる細菌やウイルスには沢山の種類があるのですが、中でも1番多いのが肺炎球菌という細菌です。この細菌は肺炎の原因の約25%を占めていて、口の中や気道にいつも存在しています。この肺炎球菌が原因で起きる肺炎の重症化を予防するのが肺炎球菌ワクチンです。

Q:肺炎球菌ワクチンにはどのような効果がありますか?
A:肺炎で死亡する危険性を70%ほど減らすことが期待出来ます。高齢者施設で確認されたことですがインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を受けた人は肺炎で入院する頻度が50%も減っていたのです!

Q:肺炎球菌ワクチンに対する札幌市からの助成は何歳の方が対象ですか?
A:年齢は平成29年度に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方で今まで肺炎球菌ワクチンを接種したことがない方が対象です。例えば65歳の方ですと昭和27年4月2日~昭和28年4月1日生まれの方になります。

Q:肺炎球菌ワクチンの助成に期限はありますか?
A:期限があります。来年30年の3月31日までに接種すれば助成の対象となります。

Q:以前に肺炎球菌ワクチンを接種しているが2回目を接種できますか?
A:1回目の接種から5年間経過していれば2回目の接種は可能です。ただし2回目の接種の場合は市の助成の対象ではなくなり費用は全額自己負担となります。

Q:肺炎球菌ワクチンを接種した方がいいですか?
A:肺炎で死亡する人の95%が65歳以上の人になるので65歳以上の方は接種が望ましいと思います。特にぜん息や肺気腫など肺の持病が有る人や過去に肺炎に何度もかかった人、糖尿病が有る人などは積極的に接種してほしいと思います。

Q:肺炎球菌ワクチンをいつでも受けることが出来ますか?
A:季節を問わずいつ接種してもよいワクチンですが、風邪やインフルエンザが流行する前に接種すると良いと思います。なぜなら風邪やインフルエンザにかかった後に肺炎を起こすことが多いからです。接種当日に風邪などで熱がある状態では接種は出来ません。また熱がなくても風邪気味など体調が万全でない時も接種は勧められません。

Q:ワクチンは予約が必要ですか?
A:当院では予約が必要ですからお手数ですが当院までお問い合わせ下さい。なお予約に関しては各病院で異なると思いますので各病院でご確認下さい。

Q:助成の対象の人の接種費用はいくらですか?
A:4,400円です。
当院では肺炎球菌ワクチンの接種を行っています。ワクチンを希望される方は予約の必要がありますので当院までお問い合わせ下さい。

 


いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 



私の風邪予防(平成29年2月)

 寒い日が続いています。受験シーズンで風邪やインフルエンザに注意している受験生や家族の方も多いでしょうね 。今年のインフルエンザの流行入りは例年より早かったのですが流行は2月も予想されます。そこで今回は私が普段から実行している風邪の予防対策をお話ししたいと思います。
 私がここ本町に開業してもうすぐ9年目を迎えます。開業前は病院で勤務医として他の医師と働いていましたから風邪で発熱しても休む事が可能でした。若い時は扁桃腺を腫らして高い熱を出す事がよくありましたが今振り返ると何の予防もしていませんでした。しかし今は自分一人ですから簡単に休むわけにもいかず開業後は風邪をひかないように予防するようになりました。風邪には特効薬はありません。ですから風邪をひいてからの治療よりも予防がいかに大切かということになります。それでは私の予防対策をお話ししていきましょう。

うがいの励行 普段から習慣としてうがいをこまめにしています。うがいは外出後が重要ですが起床時や食事の前にも行いたいですね。うがいは2通りで行います。先ず口の中全体をクチュクチュとよく洗い、次にガラガラとのどの奥を洗います。各三回ずつ長めに行うと効果があがります。予防であれば水道水で十分です。うがいは洗面所に行かないと出来ませんが、こまめに水分を取ることなら仕事の合間でも出来ます。水分の摂取で口の中に入ったウイルスを胃の方へ洗い流すことが期待でき発病の危険を減らします。
手洗いの励行 手洗いはインフルエンザに限らず感染予防の基本で手指に付いたウイルスを洗い流します。まず流水で全体を十分に濡らし薬用せっけんなどを使って手のひらだけでなく指先や指の間(特に親指の周囲)手首などを洗い30秒ほど時間をかけるのが理想です。手洗い後に重要なのは手を拭く際にペーパータオルなどを使う事で、家族で手ぬぐい・タオルを共有しないようにしましょう。タオルを共有するとタオルを通じて接触感染が起きやすくなります。
マスクの使用 インフルエンザの流行時や家族に風邪の人がいる時は有効で加湿効果もあります。注意点は鼻からあごまでをしっかりと覆うこと。マスクの表面を触らないこと。同じマスクを繰り返し使わないなどです。
人混みを避ける インフルエンザの流行時は人出の多い場所への外出は控えます。外出時は人がよく触れる所、例えば地下鉄・バスなどの吊り手やドア・トイレのノブなどは出来るだけ触らないようにします。冬は手袋をはいて行動すると接触感染の機会を減らします。
体調管理 休養・睡眠を十分にとります。疲労がたまっていると抵抗力も落ち風邪などにかかりやすくなります。冬は体を冷やさないように気をつけ 朝に温かい飲み物を飲む習慣もおすすめですよ!
湿度を保つ 空気が乾燥すると、のどの粘膜も乾きウイルスなどへの防御力が落ちてしまいます。特に冬は暖房は適度にし乾燥に注意します。
風邪をひいたかなと思った時  風邪のひき始めは診断が難しく医師の私でも判断に迷います。そういう時は先ず普段より着込み温かくします。食事も温かい物を中心に睡眠をいつもより十分に取ります。よく風邪の引き始めに葛根湯(かっこんとう)を使います。葛根湯という漢方薬の中には生姜という成分が含まれています。これはショウガのことで効能として体を温める効果があります。葛根湯をお湯で溶かして飲むと首や肩周辺がぽっと温まってくるのがわかり気持ちがいいです。
以上のように気をつけながら幸いにも開業後1日も休む事なく診療が出来ているので多少の効果はあると思っています。
 最後に今年のお正月に当院は札幌市の休日当番病院を担当しました。当日受診された患者さんは140名程でインフルエンザや胃腸炎の方がほとんどでした。待ち時間が非常に長くなり患者さんにはご迷惑をおかけしましたことを紙面をお借りしてお詫び申し上げます。
 

 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

ノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行しています!(平成29年1月)

 新年明けましておめでとうございます。早いもので当クリニックもこの春9年目を迎えます。今後も地域の皆様に信頼していただける温かい診療を目指していきたいと考えています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて今年初めてのお話しは感染性胃腸炎に関する話題です。12月下旬現在札幌市を含め全国的にノロウイルスなどが原因の感染性胃腸炎が流行しています。感染性胃腸炎の原因となる病原体はウイルスの他に細菌など様々です。ウイルスもノロウイルスの他にロタウイルスやアデノウイルスなどが原因となりますが、特に冬期に流行するのがノロウイルスによる胃腸炎です。今年の流行しているノロウイルスは今までと遺伝子タイプの違うウイルスのようですから今までノロウイルスに感染したことがある人でもまた感染する可能性が高いので要注意です!ではどのような症状がでるのでしょうか?ノロウイルスが手指や食品などを介して感染すると1日から2日くらいの潜伏期間をおいておう吐や下痢、腹痛などを起こします。軽度の発熱を1日ほど認めることもあります。一般に数日で回復し重症となることはありませんが、体力のない子供や年齢の高い方などでは時に重症となり注意が必要です。ノロウイルスと診断する為にはどのような検査をするのでしょうか?一般的には症状や周囲の流行状況などから総合的にノロウイルスが原因として治療されることが多く、どのウイルスによる病気かどうかを症状からだけで診断することは出来ません。便の中のウイルスを検査で調べる方法があり小児科や一部の病院で行われます。しかし保険適応となるのは3歳未満の幼児などに限られ、実際ノロウイルスに感染していても検査で陽性とならない場合もあり、感染していないことを正確に調べる事は出来ません。よくニュースでノロウイルスによる食中毒や集団感染の報道がありますがこれらは保健所などで行われる遺伝子検査で検出されるもので通常一般病院では行うことが出来ません。
 ノロウイルスにかかったらどのような治療を行うのでしょうか?ノロウイルスの胃腸炎に対する特別な治療方法はなく特効薬もありません。安静と十分な水分の補給そして消化の良い食事の摂取で脱水を予防し回復をまちます。体力のない小さい子供が水分を取れない時には点滴が必要になることもあります。よくお腹が痛くなるので食事を取らない方がいますが、多少お腹がゴロゴロするくらいでしたら積極的にスポーツ飲料や経口補水液、可能ならば消化の良い食事を取りましょう!下痢を我慢してはダメです。ウイルスは腸の中で増えているわけですから早く体の外に出すようにしましょう。
 ノロウイルスを予防するにはどうしたらよいでしょうか?残念ながらワクチンなどで予防することは出来ないのでノロウイルスに感染しないように対策をとるしかありません。ノロウイルスの感染経路のほとんどが口からウイルスが入り込む経口感染です。どのような感染経路が考えられるかというと①患者の便/オムツやおう吐物に触れた場合②患者の手指についたウイルスを同じ生活の中で触れた場合③食品を扱う人が感染していて、その人が調理した食品を食べた場合④汚染された二枚貝を生あるいは十分に加熱しないで食べた場合などが考えられます。患者の便や吐いた吐物には大量のウイルスが含まれるので予防対策として、①トイレの後や食事の前には患者だけではなく家族など周囲の人も必ず手を洗う ②下痢などの症状のある方は直接食品を扱わないようにする ③洗面所のタオルなどは共有せず入浴もお湯を共有しないようにする ④お子さんが吐いた時などは使い捨ての手袋を使用し直ぐに新聞紙などで拭き取りゴミ袋に密閉して処理します。吐いた場所は次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤を薄めても代用可能です)で消毒するのが理想的です。うがい手洗いを励行しノロウイルスやインフルエンザの感染を予防しましょう。

 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

週刊誌の記事を読んで思うこと (平成28年9月)

 最近患者さんから週刊誌の記事の件で聞かれることがよくありました。皆さんの中にも読まれた方がいるかもしれませんね。週刊誌では高血圧、コレステロール、糖尿病などの生活習慣病に対する薬から認知症や不眠症など今現在広く使用されている薬や治療について書かれていました。薬の実名を挙げて中には飲んではいけない、止めた方がいいと結論づけるような書き方もあります。薬の副作用や薬の大量投与の危険を報じることに意義はあると思いますが、ただただ危険性ばかりをあおって飲んではいけないなどと結論づけるのはどうでしょうか?今日は薬を服用している患者さんに少しでも安心して治療を継続していただけるよう私の外来での治療についてお話したいと思います。
 薬の副作用は残念ながらどんな薬にも認めます。薬には比較的多く見られる副作用から非常にまれな副作用まで様々な副作用があります。これらの副作用に注意しながら処方していくのが私たち医師や薬剤師の仕事になります。薬を処方した患者さんには大変でしょうが定期的に外来を受診・診察を受けていただき体調に変化がないか、血液検査などを定期的に行い薬の開始後に異常がないかを確認するようにしています。内科以外にも複数の病院から薬をもらっている患者さんも多いですよね。その患者さんがどんな薬を他に飲んでいるのか?他の薬との飲み合わせは大丈夫か?なども医師や薬剤師が確認しています。今の患者さんに必要と診断されて処方された薬ですから自己判断で中止しないで下さいね!
 血圧の薬を一度飲み始めたら一生止めることは出来ないのですか?と患者さんからよく聞かれます。“薬を減量したり時には薬を止めることも可能です”と私は答えます。高血圧や高コレステロールが生活習慣病と呼ばれるのはこれらの病気が個人の生活習慣と密接に関係しているからです。塩分の取り過ぎ、間食や食べ過ぎ、お酒の飲み過ぎ、運動不足、喫煙などの生活習慣が高血圧などの生活習慣病を悪化させます。逆に言えば生活習慣を見直していけば高血圧を改善する事も可能なのです。例えばタバコを止めてダイエットして体重が5kg減ったら上の血圧が140から130代に下がって血圧の薬を飲まないで経過を見ているような場合です。薬は飲んでいるけれども生活習慣の見直しが出来ない時は薬の中止もなかなか困難となります。血圧が180とか高すぎるとさすがに生活習慣の改善だけで血圧を正常にするのは困難で薬による治療が必要となります。血圧の値だけではなく高血圧の原因は何か?治療には薬が必要かどうか?患者さんがどういった事に注意をしていけば良いかなどは医師の判断が必要な所です。すでに血圧の薬を飲んでいる人も定期的な医師の診察が必要です。私は患者さんに自宅の血圧を継続して測定してもらい外来で見せてもらっています。こうすることで例えば夏血圧が下がってきている患者さんには夏の間血圧の薬を減らして血圧の下がりすぎを防ぐようにしています。冬には寒さで血圧が上がる人が多いですから薬を増量することもあります。
 私は診察で患者さんの仕事や食事などの生活習慣をよく聞きます。これは出来るだけ一人一人の患者さんに合った薬や薬の飲み方そして治療法を選びたいからです。そして患者さんの生活習慣の改善につながれば薬の減量も可能でしょうし糖尿病など他の生活習慣病の予防にもつながると考えています。患者さんが安心して薬による治療を継続していただくためにも定期的に診察を受けていただき、何かあれば医師に相談して下さいね!


 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

日本脳炎とワクチンのお話し (平成28年6月)

 6月になり札幌は過ごしやすい季節を迎え屋外での活動も増えているのではないでしょうか?そうすると庭でのガーデニングやキャンプ、旅行などで蚊に刺される機会も増えます。今月は蚊に刺されてうつる病気の中で唯一予防可能な日本脳炎とそのワクチンについてお話ししたいと思います。
 ところで皆さんは今年の4月から日本脳炎のワクチン接種に札幌市から補助が出て20歳未満の場合は無料で接種が出来ることをご存知ですか?日本脳炎とは日本脳炎ウイルスを持っている蚊に人が刺されることにより感染する感染症です 。蚊によってうつる感染症には日本脳炎の他にもマラリア、デング熱やジカウイルス感染症など多数あります。マラリア・デング熱は熱帯地域で多く発生しマラリアは全世界で年間二億人の患者がでると言われ、デング熱は昨夏東京などでも患者が報告され公園の蚊を駆除する様子がテレビで流れましたね。また最近テレビで報道されたジカウイルス感染症はブラジルなどで流行し妊婦に感染するとその子供に小頭症などの病気の原因になり、流行していた中南米への渡航に注意喚起が出ていました。蚊に刺されてうつるこれらの病気の中でワクチンにより唯一予防出来るのが日本脳炎なのです。では日本脳炎とはどんな病気なのでしょうか?日本脳炎はアジア地域で広く流行している病気で日本では主に九州や四国などの西日本を中心に発生する感染症です。日本脳炎はインフルエンザとは違い人から人へ感染することはありません。日本脳炎ウイルスが豚などの体の中で増え、その豚の血を吸った蚊に刺されることでうつります。ウイルスが体内に入っても症状が出ない場合がほとんどですが、時に意識障害やけいれんを起こす脳炎を発症した場合は死亡率が高く、仮に回復しても麻痺や精神障害など非常に重い後遺症を残してしまう事が多い感染症です。そして日本脳炎には特効薬的な治療方法がないためワクチンによる予防が最も効果的です。北海道以外の日本ではワクチンの普及により年間の発症者は10人未満となっていますがそれでも毎年患者の報告があります。北海道は今まで「日本脳炎の予防接種を行う必要がない区域」として指定されていましたが(つまりほとんどの道民は今まで日本脳炎ワクチンを接種する機会がありませんでした)、道民が道外や海外に行き来する機会が増えていること等から、平成28年4月から日本脳炎のワクチンを定期予防接種とすることが決まりました。定期予防接種とは国や市が乳幼児に強く勧めているワクチンで、三種混合ワクチンや麻しん風しんワクチンなどが定期予防接種にあたります。日本脳炎ワクチンは乳幼児の場合3歳頃に初回の接種とされていますが、接種したことがない中学生や高校生はどうしたらよいのでしょうか?ワクチンの接種をまったく受けていない場合にはワクチンは計4回の接種が勧められていて、①初回の接種、②2回目は初回から1ヶ月後、③3回目は初回の接種から1年後、④4回目は初回から約5年後となります。1~2回の接種では十分な抗体が出来ないので3回以上の接種が必要です。ワクチンによる副作用は他のワクチンと同様で接種部位の痛みや腫れ、全身の反応として頭痛、発熱、発疹やじんま疹などがあげられています。副作用の詳細は厚生労働省のホームページなどに記載されていますのでご参照下さい。
 最後に当院では日本脳炎ワクチンの接種を行っています。当院での対象は中学生以上で20歳未満であれば接種費用は無料です(20歳以上で接種の場合は全額自己負担で有料になります)。ワクチンは完了までに4回の接種が必要です。接種には予約が必要ですからご希望の方は当院までお問い合わせ下さい。


 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

タバコの煙はPM2.5ということを知っていますか!? (平成28年1月)

 新年明けましておめでとうございます。早いもので当クリニックもこの春8年目を迎えます。今後も地域の皆様に信頼していただける温かい診療を目指していきたいと考えています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
 さて今年初めてのお話しはPM2.5とタバコに関する話題です。皆さんも記憶に新しいと思いますが昨年12月に中国の北京市でPM2.5の濃度が上がり外出を控えるよう警告が出ていました。高層ビルの高層階が見えなかったり、特殊なマスクを使用している大勢の市民がテレビで映し出されていました。PM2.5の上昇は中国では工場の排煙や家庭での石炭の燃焼、自動車の急速な普及などが原因にあがっていましたが、PM2.5は日本でももっと身近な所にあります。実はタバコの煙がPM2.5になるのです! PM2.5とは小さな粒子の物質の総称で、ある一つの物質を指すものではありません。PM2.5は粒子の大きさが2.5ミリの1000分の1以下の粒子のことで例えると髪の毛の1/30以下、スギ花粉と同じくらいの大きさとなります。発生源としてはタバコの他に、ボイラーや工場からのばい煙や車、また自然の中からも発生しています。しかし現在の日本ではタバコの煙が一番のPM2.5の問題と言っても過言ではありません。例えば禁煙されていない飲食店内のPM2.5の濃度は北京の大気汚染と同じレベルになります。さらに狭い自動車の車内で喫煙した場合のPM2.5の濃度はもっと高くなると言われています。皆さんは受動喫煙を知っていますか?最近美唄市で受動喫煙の防止条例が始まりましたが、受動喫煙とは喫煙者でなくても、喫煙者の近くに居たり喫煙のある環境に居ることで体の中にタバコの煙を吸い込んでしまうことを言います。タバコの煙は二つに分けられ、①喫煙者が吸い込む煙と②火のついたタバコの先から出る煙があります。受動喫煙の場合主に②のタバコの先から出る煙を吸い込んでいるのですが、実はこの煙りには喫煙者が実際に吸い込む煙より高い毒性を持ったガスが含まれているのです!家で換気扇の下でタバコを吸うという方が多くみられますが、タバコの煙は実は家中に広がっています。ではベランダで吸うと大丈夫なのでしょうか?決してそうではありません。家の中ではタバコを吸わないという喫煙者の親を持つ子供の尿を調べたところタバコの成分が高濃度に見つかったという調査があります。これはベランダで吸っても隙間から煙が入りますし、喫煙者はしばらく肺の中にたまった煙を吐いているので、子供の前で吸わなくても子供には受動喫煙が起こっているのです!受動喫煙により子供の喘息などのアレルギーの病気が増えるとも言われています。喫煙する人は自分のタバコの匂いに気がつきませんが、タバコの煙は吸わない人や子供にとっては嫌なものです。自分だけではなく家族の健康の為にも禁煙に挑戦してみませんか?
 最後に禁煙の治療に関してお話ししますね。禁煙外来は3ヶ月間にわたり計5回の外来を受診します。最初の診察でニコチン依存症と診断されると胸のレントゲンや呼吸の検査・採血などを実施し医師から禁煙に関するアドバイスを受けます。禁煙の薬は三ヶ月間飲み続けます。気になる禁煙の成功率は80%以上です。禁煙治療にかかる費用は病院と薬局の薬代を併せても三ヶ月間のタバコ代より安くなると思います。当院では禁煙治療を行っています。禁煙治療の詳細は当院ホームページでもご覧頂けますしスマホにも対応していますので、いけだ内科循環器クリニックで検索下さい。遅すぎる禁煙などありません。今年こそ禁煙に挑戦してみてはどうですか?それでは今年が良い一年となりますよう祈念して今年一回目のお話しと致します。

 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

インフルエンザワクチンの改良について(平成27年12月)

 早いもので今年も最後の月となりました。皆さんも既にご存知の方も多いと思いますが今年からインフルエンザのワクチンが改良され大きく変わりましたのでワクチンの改良点を中心にお話ししたいと思います。
 ワクチンはその冬に流行が予想されるインフルエンザウイルスに合わせて作られています。インフルエンザウイルスには大きく分けてA型とB型があり、同じA型の中でも細かくタイプが分かれています。昨年までのインフルエンザワクチンは2種類のA型と1種類のB型のウイルスに対して効果がありました。それが今年からはB型のウイルスも2種類に増えて計4種類のウイルスに対して予防効果が得られるようになったので、より多くの種類のインフルエンザウイルスによる重症化を防ぐことが期待出来ます。今年接種を済まされた方は気がついたと思いますが、インフルエンザワクチンの改良に伴いワクチンの製造価格も上がったため接種料金も上がりました。500円程値上がりしたと思いますが当院ではなるべく沢山の人にインフルエンザの予防をしていただきたいとの思いからワクチンの価格を設定しています。
 それでは昨年のインフルエンザの流行を振り返ってみましょう。昨年は11月下旬頃から流行が始まり12月には急速に流行が拡大しています。例年よりも2週間ほど早い流行の始まりでした。このようにインフルエンザの流行の始まりは毎年異なりますから早めのワクチン接種が安心です。流行のピークは1月中旬から下旬でピークの患者数は例年並みで、最近の中では比較的速やかに流行が終わったシーズンでした。インフルエンザの型別ではA型が主流でB型の流行は少なかったようです。インフルエンザで入院された方は60歳以上の方が前年に比較し約2倍と増加しています。札幌市では65歳以上の市民の方に補助を出して1,400円の自己負担でインフルエンザワクチンの接種が出来ますから、是非ワクチンの接種で重症化を予防したいですね!
 ところでインフルエンザに対する抗体(免疫)を持っている人はどのくらいいるのでしょうか?先にお話ししたようにインフルエンザウイルスには様々なタイプがありますからウイルスにより異なるのですが、全体的な傾向として4歳以下の乳幼児と65歳以上の年齢の方々は抗体を持っている人が他の年代に比べて低い事が確認されています。インフルエンザにかかると若くて持病の無い方でも時に重症になることがインフルエンザではあります。特に喘息や肺の病気、糖尿病などの持病のある方そしてご高齢の方は重症化の可能性が高まりますからワクチン接種が勧められます。またワクチン接種と共に大切なのは流行期のうがい・手洗いの励行そして体調管理ですね!
 当院ではインフルエンザワクチンの接種を中学生以上の方を対象に12月末まで行っています。ワクチンの接種は年内で終わりますので接種を希望する方は気をつけて下さい。なお当院では予約の必要はないので直接クリニック窓口にてお申し出下さい。それでは皆さんが健康で新しい年を迎えられますよう祈念し今年最後のお話しと致します。

 いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

間違った禁煙方法について(平成27年9月)

禁煙への第一歩はまずタバコに関する正しい知識を持つことです!今回は間違った禁煙方法についてお話ししようと思います。

タバコの本数を減らす
よく禁煙の前にまず本数を減らしてから禁煙するという人がいますがこれは逆効果です。タバコの本数を減らしても吸う間隔が長くなるので体がニコチン切れとなりイライラなどの禁断症状がより強くなります。そして次の一本のタバコで症状が解消されると満足感も強くなり余計にタバコから離れにくくなるのです。朝一番のタバコを思い出してください、普段のタバコより美味しく感じませんか?これは眠っている間はタバコが吸えないので体がニコチン切れとなり、朝の一本目でそのニコチン切れが解消されるため大きな満足感があるためです。禁煙の近道はスッパリと吸うのを止めることなのです!

軽いタバコに変える
よく禁煙する前に“軽いタバコ”に変えるという人がいます。軽いタバコとは煙を薄めるために空気穴を多くしているのですが、実際は指でふさがり煙は薄まらず意味がありません。また根本まで吸ったり無意識に強く吸ったりして自分で調節してしまうため体内に入るニコチンの量は変わらないとされ、健康にとってメリットは期待できません。禁煙するならすっぱりと止めることです。

電子タバコを使う
これもお勧めできません。外国では香りや味を楽しむ物として使用されている電子タバコですが、日本では禁煙の手段として使われることが多いようです。せっかく禁煙しようと思っても電子タバコを使うという行為が長年の喫煙体験を思い出させ再喫煙の危険が高まるだけです。 また最近、日本で発売されている電子タバコの中に本来禁止されているニコチンや発ガン物質が含まれている物が見つかりニュースで注意喚起の報道がされていました。

もう歳だから禁煙しても遅いのでは?
そんなことはありません。禁煙を始めると徐々に咳やたんが減ってきます。禁煙を継続していくと心臓や脳の病気の危険が低くなっていきます。また禁煙と言うとどうしても辛いという悪いイメージばかり先行しますが、健康面以外でも 食事が美味しくなった、服に匂いが付かなくなった、家族が喜んでくれた、貯金が出来て旅行に行けたなど多くのメリットも有りますよ!禁煙に遅すぎるということはないのです。

タバコを吸うとすっきりしてストレスに効果がある?
よくタバコを吸うとイライラがおさまるのが良いと言う方がいます。でもそれはニコチン依存症のせいかもしれません!長年の喫煙でニコチン依存になるとタバコを吸い終わり1時間もするとイライラだったり落ち着かない感じというニコチン切れ症状が起きてきます。そこでタバコを吸うとニコチンが体に入ってくるためイライラなどの症状が改善されると考えられます。禁煙できればこのタバコによるイライラなどがなくなりますよ!意志の強さで禁煙できる方もいるでしょうが、ニコチンの離脱症状には個人差が大きく、また吸いたい気持ちというのはしばらく続きますから禁煙に何度も失敗している方は禁煙治療をお勧めします。禁煙は自己流で行うよりも薬を使い医師からのアドバイスをもらう事で禁煙の成功率が上がります。

最後に禁煙の治療に関してお話ししますね。禁煙外来は3ヶ月間にわたり計5回の外来を受診します。最初の診察でニコチン依存症と診断されると胸のレントゲンや呼吸の検査・採血などを実施し医師から禁煙に関するアドバイスを受けます。禁煙の薬は3ヶ月間飲み続けます。気になる禁煙の成功率は80%以上です。禁煙治療にかかる費用は病院と薬局の薬代を併せても3ヶ月間のタバコ代より安くなります。当院では禁煙治療を行っています。予約の必要はありませんが初回の診察には時間がかかりますので余裕を持ってご来院下さい。禁煙治療の詳細は当院ホームページでもご覧頂けます。スマホにも対応していますので、いけだ内科循環器クリニックで検索下さい。

いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 

あなたも禁煙治療を受けてみませんか?(平成27年6月)

 最近テレビでよく禁煙治療のCMが流れていますね。当院でも飲み薬を使った禁煙治療を行っていて禁煙の成功率は約80%、今までに禁煙に成功した人は160人を超えています。禁煙は自己流で行うよりも薬の治療で楽に禁煙に取り組め禁煙の成功率が数倍にあがるのですよ!さああなたも禁煙に挑戦してみませんか?

 皆さんの中に禁煙に挑戦したけれど2、3日しか続かなかった経験のある人や 禁煙の治療があるのは知っているけれど内容も解らないし病院に行きづらいという方が沢山いらっしゃるのではないでしょうか?今回からタバコと病気の関係、禁煙が難しい原因はニコチン依存症であるということや禁煙の具体的な治療法と禁煙に用いられる薬について数回にわたりお話ししようと思います。みなさんは北海道の喫煙率が高いと言う事をご存知でしょうか?男性は国内で3番目に高く、女性は1位です。北海道では肺ガンにより死亡する人が多いのですが、タバコの中にはニコチンや一酸化炭素など200種類以上の有害物質が含まれ、中には発ガン物質も多く認められています。2007年に病気で亡くなった人の中で約12万人が喫煙の影響を受けて心筋梗塞や脳卒中、肺ガンなどのガンで死亡しています。高血圧による死亡は10万人ですから喫煙は今の日本人の死亡原因として血圧以上に最も危険な原因とも考えられます。またタバコによる健康被害は喫煙者のみならず他人の健康にまで影響します。受動喫煙とは喫煙者の近くに居たり喫煙の環境に居ることで喫煙しなくてもタバコの煙を吸い込んでしまうことを言います。この受動喫煙で年間7千人近くの人が死亡していると推定されます。受動喫煙で吸い込む煙りには喫煙者が吸い込む煙より高い毒性を持ったガスが含まれています。家で換気扇の下やベランダでタバコを吸う方がいますが、あまり効果は無くタバコの煙は家中に広がります。家の中ではタバコを吸わない喫煙者の親を持つ子供の尿を調べたところタバコの成分が高濃度に見つかったという調査があります。子供の前では吸わないで気をつけているつもりでも子供には受動喫煙が起こっているのです!最近公共の施設など禁煙の場所が増えていますが、では受動喫煙を防止するとどうなるのでしょうか?実は心臓の病気が減ったというアメリカの調査結果があるのです。アメリカのヘレナという地域で法律によりバー、カジノ、レストランなどを全面的に禁煙にしたところ心筋梗塞の患者が60%も減りました。興味深いのはその後喫煙者の反対で禁煙を解除したところ心筋梗塞の患者がまた増えて元に戻ってしまったのです。この結果からヘレナではレストランなどを法律で全面禁煙としました。禁煙の場所が増えると受動喫煙で病気になる人を減らせ、また喫煙者も喫煙場所が減ることで不便だから禁煙したいと思うようになります。大勢の人が集まる場所を禁煙にすることはタバコを吸う人はもちろん、吸わない人の健康をも守ることになります。

 最後に禁煙の治療に関してお話ししますね。禁煙外来は3ヶ月間にわたり計5回の外来を受診します。最初の診察でニコチン依存症と診断されると胸のレントゲンや呼吸の検査・採血などを実施し医師から禁煙に関するアドバイスを受けます。禁煙の薬は三ヶ月間飲み続けます。気になる禁煙の成功率は80%以上です。禁煙治療にかかる費用は病院と薬局の薬代を併せても三ヶ月間のタバコ代より安くなると思います。当院では禁煙治療を行っています。予約の必要はありませんが初回の診察には時間がかかりますので余裕を持ってご来院下さい。禁煙治療の詳細は当院ホームページでもご覧頂けます。次回は、やめられないタバコの原因はニコチン依存症であるというお話しをしたいと思います。

いけだ内科循環器クリニック 院長:池田勝哉

 



インフルエンザの症状・検査と治療について(平成27年1月)

インフルエンザが流行しています!
新年明けましておめでとうございます。早いもので当クリニックもこの春7年目を迎えます。今後も地域の皆様に信頼していただける温かい診療を目指していきたいと考えています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さてこの冬のインフルエンザの流行は関東や岩手など11月下旬から流行の兆しがあり12月5日にインフルエンザが全国的な流行に入ったと発表がありました。これは例年より3週間程早いものです。札幌でも12月に入り小学校の学級閉鎖などが見られたのですが特にここ東区では12月下旬現在インフルエンザの流行が非常に目立っています。学校の冬休みが終わるとインフルエンザの流行が更に広がりますので注意が必要ですね。そこで今回はインフルエンザのお話しをいたします。まずインフルエンザの症状です。普通の風邪とインフルエンザの症状の違いですが、インフルエンザは症状が急激に出現し高熱などの他に寒気や頭痛・関節痛などの全身の症状が非常に強い点だと言えます。またインフルエンザの流行期であること、自分の周囲(家庭・学校・職場など)でインフルエンザが流行しているかどうかもインフルエンザを疑う重要な点です。皆さんもご存知かもしれませんが迅速検査というインフルエンザの検査がよく行われます。この検査は患者さんの鼻の中を綿棒でぬぐいインフルエンザウイルスが存在するかどうかを10分程度で調べる検査ですが問題点もいくつか有ります。一つはある程度体の中でインフルエンザウイルスが増えないと検査ではわからないので高熱が出て直ぐに病院で検査してもインフルエンザと出ない事があります。最初の検査ではインフルエンザが陰性でしたが翌日再検査したらインフルエンザが出たと言う事はよく経験します。また患者さんが実際にインフルエンザにかかっていても検査では違うという結果がでる事もあります。つまり検査は100%絶対ではないので症状や流行状況からインフルエンザと診断し治療を行うこともあります。

インフルエンザの治療で大切なのは発症後48時間以内に薬を開始することです。インフルエンザの薬はウイルスが増えるのを抑えることで効果を出します。インフルエンザウイルスは48時間を経過すると体の中でその数が減るといわれているので薬を出来るだけ早くに開始する事が必要です。現在治療薬には飲み薬、吸入薬と点滴注射の3種類があります。飲み薬のタミフルは5日間の内服が必要で異常行動との関連を指摘されて以降原則10歳代の子供には投薬されていません。吸入薬は手軽ですが吸入が上手く出来ない人や小さな子供さんには向いていないようです。最近は点滴注射があり一回の点滴で速やかな効果が期待出来るので私もよく使用しますが患者さんの経過も良いようです。最後にインフルエンザの診断・治療がどうして重要かと言いますとインフルエンザには治療出来る薬がある点なのです!ですから早くにインフルエンザと診断し治療を開始すると回復が早くなる可能性があります。よく熱が出たばかりなので病院でインフルエンザの検査を受けるのは翌日にするという話を聞きますが、熱が出て直ぐでもインフルエンザの検査が陽性となることはよくあるのでインフルエンザが疑われる時は出来るだけ早期に病院を受診して下さい!

最後に当院では肺炎球菌ワクチンの接種を行っています。インフルエンザにかかった後に肺炎になり重症化するのはご年配の方に多く見られますから肺炎球菌ワクチンの接種も済ませたいですね。26年度の対象年齢の人が市の助成を受けられるのは3月31日までですからご注意下さい。当院ホームページでも肺炎球菌ワクチンの案内をしています(スマホでもご覧いただけます)。それでは風邪・インフルエンザにかからないよう手洗い・うがいを励行され、今年が良い一年となりますよう祈念して今年一回目のお話しと致します。

医療法人 いけだ内科循環器クリニック 理事長:池田勝哉

 

高血圧やコレステロールの基準が変わったの?(平成26年6月)

高血圧やコレステロールの基準が変わったの!?
 最近日本人間ドック学会が新たな健診の基準値を発表し新聞紙上や週刊誌で取り上げられています。なにが話題になっているかと言いますと血圧やコレステロールの基準が緩んだというものです。特にコレステロール値が今までの基準値から大きく離れ上限値つまり正常と考えられる値がかなり高く示されたことです。今まで自分は血圧やコレステロールが高いと言われていたのにこれからは大丈夫、ということでしょうか?
 いいえ、私の個人的な考えを言わせて頂ければ今回の発表で健康の基準が緩んだと考えるのは間違いだと思います。
今回の人間ドック学会の発表は人間ドック受診者から高血圧や糖尿病の治療を受けず喫煙もしないなどの条件を満たす、今現在健康と考えられる人たちのデータを集めて基準範囲を示しています。あくまで人間ドック受診の人たちの検査値の範囲を示したものですから治療など判断に用いる正常値と考えるのは適切ではありません。高血圧症や高コレステロール血症の有る方でも特別な症状はありません。しかし高血圧症の問題点は今現在何か症状があるから血圧の治療をするのではなく、血圧が高い状態を放置していると動脈硬化が進み明らかに脳梗塞などの病気が増えるため、これらの病気の予防の為に高血圧を治療していくのです。ですから今回の人間ドック学会の基準には病気による将来の予測が考えられていないことになります。またもう一つの問題点は基準値作成のもととなる対象の人が人間ドック受診者という非常に限られた人たちになっている点です。今回の人間ドック学会の発表した値は参考程度に受け止めるべきでしょう。
 では今回の人間ドック学会の基準値を見てみましょう。血圧では収縮期つまり高い方の血圧の正常値の上限が147以下となっていますが、高血圧学会などの基準では140以上が高血圧症と診断されるので147の血圧は高血圧となります。ただ気をつけてほしいのは高血圧の診断は健康診断や病院の血圧より自宅の血圧測定値が重要だと考えられている点です。その理由は病院などで測ると緊張などで血圧が上がり正確な血圧の評価が出来ない為です。最近では血圧計が普及し自宅で血圧を測る方も多いと思います。一回の血圧測定で判断せずしばらく自宅で血圧を続けて測定することが大切だと思います。次に悪玉のコレステロールつまりLDLコレステロールの正常値が178以下と示されましたがこれは現在の正常値140以下と大きく異なります。コレステロールの上昇は男女いずれにおいても狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気を増加させます。ただ同じコレステロールの値でも男性と女性では心臓の病気になる可能性は異なり男性の方が高くなります。性別以外では肥満や喫煙が加わると危険度はかなり上がります。例をあげてLDLコレステロールが同じ160の男女で考えてみましょう。女性は50歳、喫煙はなく肥満や高血圧もありません。一方男性は同じく50歳ですが30年の喫煙歴と肥満があり高血圧の治療中とします。同じコレステロールの値でも女性に比べこの男性の方が治療の必要性が非常に高くなるのです。
 今回の基準値の提言は一見健康な人が増える形になりますが、その値に一喜一憂するのではなく先ずは自分の生活習慣をもう一度見つめてみる事が大切です。喫煙のある方は禁煙に挑戦したり肥満のある場合は食べ過ぎや運動不足の解消の工夫をしてみてはいかがでしょうか?もちろん健診で高血圧や高コレステロール血症を指摘された場合は病院を受診してきちんと診断指導を受けて下さいね!当院では禁煙の治療や動脈硬化の早期診断を目的に血管年齢ドックを実施しています。詳細はホームページでもご案内していますので是非ご覧下さい。

 

麻しん(はしか)の流行とワクチン(平成26年5月)

 最近麻しん(はしか)が流行してきているのをご存知でしょうか?首都圏を中心に流行の兆しが見られ札幌でも報告があります。特に海外で感染するケースが目立っています。今月は麻しんと麻しんのワクチンに関するお話しです。
 麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で春から夏にかけて流行する傾向があります。その感染力は非常に強く免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症します。麻しんの症状は10~12日程度の潜伏期の後、発熱・咳やくしゃみなどと言った風邪のような症状で始まります。数日後にいったん解熱したかと思うとさらに高熱と口の中のほほに斑点のようなものが出て体全身に発疹が出てきます。また麻しんは肺炎や脳炎などの合併症も認められ重症な場合は死亡することもある感染症なのです。これらの症状は小児では典型的な症状が出てきますが大人では症状が異なることが多く早期診断を難しくしています。
では麻しんの感染はどうやって予防出来るのでしょうか?麻しんウイルスは接触感染の他に空気感染でも起きます。これは免疫のない人が麻しんの患者さんと同じ部屋の中にいるだけで感染する可能性があるということで、手洗い・うがいでは感染を予防することが出来ません。麻しんの予防にはワクチンの接種が重要なのです!皆さんは平成19~20年にかけて10~20代の若い人を中心に大学などで麻しんが大流行したのを覚えていますか?これは麻しんのワクチンの接種経験がなかったり、幼少期にワクチンを済ませていても大人になった時にワクチンの効果つまり免疫が落ちてきていることが原因と考えられています。また昔は麻しんは比較的ありふれた感染症でしたから家族が麻しんになり自分もかかっていたのですが、現在は麻しんが身近な病気でなくなってきたことも理由と考えられます。以前肺炎球菌ワクチンの紹介をしたときに日本はワクチン後進国であるという話をしましたが実は先進国の中で日本ほど麻しんが未だに発生している国はないのです!ワクチンで予防出来る麻しんを撲滅するためには国民みんなが広くワクチンを接種して高い免疫を保つことが重要になります。また最近はアジアへの海外旅行後に麻しんを発症するケースが多くなっています。中国やフィリピンなど東アジアでも麻しんの発生が確認されていますから国内で流行が抑えられていても海外で感染し帰国後に発症してしまう危険性もあります。昨年のちょうど今時期もワクチンの接種歴のない人を中心に風しんが流行し風しんのワクチンがしばらく不足した経緯があります。母子手帳などで麻しんにかかったことが確認出来ないときやワクチンの接種歴が不明なときは流行の前に接種をお勧めします。実際に麻しんにかかっていた場合でもワクチンを接種して問題無いとされています。単独の麻しんのワクチンでも良いですが麻しんと風しんの混合ワクチンであれば一回で麻しんと風しんに対する免疫を獲得でき便利だと思います。副作用は接種部位の赤みや腫れの他に接種後の発熱や発疹が見られることがありますが全身的な影響は子供に比べ大人では少ないようです。
最近は大学などに入学の際にワクチンの接種歴を確認し免疫がないことが確認された場合にはワクチンの接種を義務づけている学校も多いようです。当院では麻しんおよび風しんのワクチンの接種が可能です。接種には予約が必要ですからご希望の方は当院までお問い合わせ下さい。

 

インフルエンザQ&A(平成26年2月)

2月現在札幌でもインフルエンザの流行が急速に拡大してきているようです。そこで今回は皆様からよく質問される又は疑問に思われていることに関してQ(質問)&A(答え)の形でお話ししようと思います。

Q:普通の風邪とインフルエンザは違うのですか?
A:普通の風邪は様々なウイルスが原因となり症状はのどの痛み、鼻汁や咳などで全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなりません。一方インフルエンザは症状が急激に出現し高熱の他に筋肉痛・関節痛などの全身の症状が強いのが特徴です。また幼児や高齢の方などは肺炎などを引き起こし重症になることがあります。

Q:インフルエンザに去年かかったので今年は大丈夫?
A:インフルエンザウイルスは毎年流行の型が異なりますから去年かかったので今年は大丈夫ということはありません。また同じ冬にA型のインフルエンザにかかりその後にB型のインフルエンザにかかる可能性もあります。

Q:インフルエンザワクチンを接種したのでインフルエンザにはかからない?
A:残念ながらワクチンを接種していても絶対インフルエンザにかからない、というものではありません。しかしワクチンは発症や重症化を抑えるのに効果が認められています。

Q:昨年ワクチンを受けましたが今年も必要ですか?
A:ワクチンの予防効果が期待出来るのは五ヶ月程度です。ワクチンはシーズン毎に流行が予想されるウイルスに対して作られるので毎年接種するのが理想です。

Q:熱が出たばかりなので病院でインフルエンザの検査を受けるのは明日にした方が良いのでは?
A:違うと思います。確かに発症早期では検査で陰性と出ることもありますが直ぐにインフルエンザと判明する人もいます。これはウイルスの増え方が人によって異なることも原因の一つです。インフルエンザで大切なことは早期診断・早期の治療ですから私は早めの受診が必要だと思います。

Q:昨日インフルエンザの検査で陰性だった。でも今日も高熱が続き体の調子が悪いがどうしたらいい?
A:インフルエンザの可能性があるので再検査が必要です。最初の検査でインフルエンザが陰性で翌日再検査したらインフルエンザが陽性だったという事はよく経験します。ですから検査が陰性でも高熱が続き体の調子が良くならない時はもう一度病院を受診するように患者さんに伝えるようにしています。

Q:インフルエンザの薬にはどのような種類がありますか?
A:現在飲み薬、吸入薬と点滴注射の3種類があります。飲み薬のタミフルは5日間の内服が必要です。異常行動との関連を指摘されて以降原則10歳代の子供には投薬されていません。点滴注射は一回の点滴で速やかな効果が期待出来るので私は大人に使用しています。飲み薬・注射の他に吸入薬がありますが吸入が上手く出来ない人や小さな子供さんには向いていないようです。

Q:熱が直ぐに下がったので明日から仕事に行っていい?
A:解熱後数日間は自宅療養が必要です。インフルエンザは感染力が強く解熱後もウイルスは体から排出されるので外出を控える必要があります。また大人より子供の方がウイルスの排出が長引くようです。参考までに学校の決まりでは「発症後5日を経過しかつ解熱した後2日、幼児では3日を経過するまで登校停止とする」となっています。

Q:熱が直ぐに下がったのでインフルエンザの薬を止めてもいい?
A:医師の指示通り解熱後もきちんと最後まで服用・使用して下さい。現在インフルエンザの治療薬には飲み薬の他に点滴や吸入があります。それぞれ日数が異なるので指示を守って下さい。

最後にインフルエンザの診断・治療がどうして重要かと言いますとインフルエンザには治療出来る薬があること、そしてインフルエンザは重症化することがあるので早めにインフルエンザと診断し治療を開始することが大切だからです。それでは風邪・インフルエンザにかからないよう手洗い・うがいを励行し厳冬の2月を乗り切りましょう。

 

風しんワクチン(平成25年12月)

 早いもので今年ももう12月となりましたね。先月の話題はインフルエンザのワクチンでしたが今回は風疹ワクチンのお話しです。

 皆さんは今年の夏首都圏と関西を中心に風疹が大流行したのを覚えていますか?札幌でも例年より風疹の患者さんが10倍ほど多く見られました。風疹は春から初夏にかけて流行し「3日はしか」と言われるように子供がかかった時の症状は比較的軽症ですが妊婦さんが風疹にかかると赤ちゃんが生まれつきの目や心臓の病気になる場合があるのです。

昨年から今年の流行の中心は20歳から40歳代の男性でした。これはどうしてでしょうか?実は風しんのワクチンは生まれた時期によって受けている人と受けていない人がいるからなのです!風しんワクチンは中学生の女子を対象に学校での集団接種として始まり、次に男子にも接種機会が設けられましたが集団接種を止め個別の接種に変更されて以降接種を受ける人が減り結果抗体保有率も減少しました。このようにワクチンの対象者や接種の方法はずっと同じではなく年代によって異なるのです。具体的にお話ししますと1987年生まれ以降の男女(現在26歳)は現在幼児期からワクチンを受ける機会がありますからワクチンによる免疫が得られます。しかし1962年~1979年生まれの男性(現在34歳から51歳)は小児期に風しんのワクチンを受けていません。これに対し1962年~1979年生まれの女性は中学生の時に集団接種の形でワクチンを受けているのです。1979年~1986年生まれの男女(現在25歳から34歳)も接種率が低かったため免疫がある人が少ないと言えます。

 風疹は風しんワクチンを受けることで予防することが出来る感染症です。ワクチンの接種が推奨される人は
  1. 定期接種を受けそびれている人
  2. 妊婦さんと同居している家族
  3. 医療従事者
  4. 保育園など子供と接することが多い職業の人となっています。
今年の夏風疹が流行した際に風疹のワクチンを希望する人が急増したためワクチンが足りなくなり接種出来なかった方も多かったと思います。しかし今現在はワクチンが十分にありますから接種が可能です。再び流行が始まってからあわてて接種するのではなく今ワクチンを受けておくと安心ですね!最後に1つ注意点をお話しします。12月はインフルエンザワクチンを受ける方も多いですが風しんのワクチンを受けた場合約1ヶ月経過しないとインフルエンザワクチンを接種出来ません。よって今の時期に両方のワクチンの接種を希望される方はインフルエンザワクチンを先に接種されることをお勧めいたします。当院では風しんのワクチンの接種が可能です。接種には予約が必要ですからご希望の方は当院までお問い合わせ下さい。

認知症と生活習慣病の関係(平成25年9月)

 今回は認知症(にんちしょう:ちほうのことです)と生活習慣病の関係についてお話ししたいと思います。現在認知症の患者さんは全国で200~300万人いると言われ65歳以上の約10人に1人の割合に当たり今後も高齢化社会の進行に伴い増加すると考えられます。私の様な認知症の専門医ではない、かかりつけ医でも認知症を疑って患者さんに専門病院を受診していただいたり認知症の薬を出すこともあります。

 認知症といっても病気の種類・病気の状態は一つではありません。その中で約半数を占めるアルツハイマー型認知症は年齢による物忘れとは違います。具体例をあげますと、加齢による物忘れは「昨日何を食べたか思い出せない」ことはあっても「食事をしたこと」は覚えています。一方アルツハイマー型認知症が疑われる物忘れでは「食事をしたこと」自体を忘れてしまうのが特徴です。認知症になる原因は複雑で様々な原因により認知症が起こると考えられていますが、近年の研究でアルツハイマー型認知症は高血圧や糖尿病などの生活習慣病と密接な関係があることが分かってきました。例えば高血圧では夜の血圧が高すぎる人は認知機能が低下することや、血圧を下げる治療で認知症の発症予防につながるなどの報告があります。糖尿病では糖尿病の治療効果別に認知症の発症を比べたところ糖尿病の治療が不良な高齢の患者さんでは認知症の発症が非常に増えてくることがわかっています。近年の急速な高齢化に伴い糖尿病の患者さんも増えていますが認知症の患者さんの増加と関係があるのかもしれませんね!その他では食べ過ぎ・運動不足による肥満が認知症の原因となる可能性も指摘されています。これらとは逆に知的な活動が認知症の予防につながるとも言われています。

 現在認知症を治す特効薬のような薬はなく今使われている薬は認知症の進行を遅らせることや周辺症状と言って怒りやすいとか不眠などの症状を和らげる事を目的としています。つまり治す薬がない現在は認知症をいかにして予防するかはとても重要なことです。前回危険因子(きけんいんし)のお話しをしました。危険因子とはある病気を起こす確率を増やすことになる要素の事でしたが、実は認知症の危険因子が糖尿病、高血圧やコレステロールの異常なのです。そこで認知症の危険因子を減らすことで認知症の発症を遅らせるという考え方が出てきました。高血圧の異常を放っておくと脳卒中や心筋梗塞などの危険が高まるのと同じように高血圧や糖尿病の治療が十分でないと将来的に認知症になる危険性が上がるかもしれないということです。

 先日人間ドック学会が去年人間ドックを受診した人のうち全ての項目で異常がなかった人の割合が7%と過去最低であったと発表しました。30年前は異常が全くなかった人が約30%ですから異常を示す人がかなり増えたことになります。異常ありの項目で多かったのは肝機能異常や高コレステロールと肥満でした。この原因としては生活習慣の乱れや高齢化、食事の欧米化・運動不足などがあげられます。危険因子が有るからといって必ず病気や認知症になるわけではありません。しかし危険因子が沢山ある時には先ず自分の食生活や運動の習慣を見直していき必要な時は血圧やコレステロールの治療をすることはとても重要です。特定健診を受けて自分の危険因子をチェックしてみましょう!当院では特定健診を随時受け付けております。予約の必要はないので(第1,3,5土曜日も特定健診を受け付けています)直接窓口で特定健診とお申し出下さい。

 

危険因子とは?(平成25年8月)

 皆さんは危険因子(きけんいんし)という言葉を聞いたことがありますか?危険因子とはリスクファクターとも呼ばれ、簡単に言えばある病気を起こす確率を増やすことになる要素・要因となります。今回は危険因子についてのお話しをします。

 危険因子は病気によって異なります。例えば皆さんは肺がんと言えば何が危険因子になると思われますか?そう!喫煙ですね。喫煙は肺ガンの重大な危険因子の一つです。しかし肺ガンの危険因子は喫煙以外にもあるのです。例えば石綿(アスベスト)などを扱う職業など特殊な化学物質への長期間の暴露(ばくろ:さらされるという意味)もそうですし、肺気腫などの肺の病気があるという事も肺ガンの危険因子の一つなのです。6月に狭心症の事を話しましたが、その時に高血圧・糖尿病・コレステロールが高い・喫煙する人は狭心症に注意が必要という話をしました。まさに狭心症の危険因子が今あげた高血圧・糖尿病・高コレステロール・喫煙なのです。もちろん危険因子が有るからといって必ず病気になるということではありません。しかしこの危険因子が沢山あるとどうなるのでしょうか?例えば狭心症や心筋梗塞になる危険性は危険因子が全くない人の危険性を1とした時に先ほどの危険因子を全て持つ人の病気になる危険性は約8倍に増えるのです!

 先月は特定健診の話題でした。特定健診では血圧を測定し高血圧がないかを診断します。腹囲を測定することで肥満の程度(内臓脂肪)を判定します。採血ではコレステロールが高くないか糖尿病がないかどうかを調べます。つまり特定健診は皆さんの危険因子がどれくらい有るのかを調べる健診でもあるのです!私は勤務医時代に患者さんが心筋梗塞などで入院されて初めて高血圧やコレステロールなどの異常がわかるといった事を数多く経験してきました。病気になってから治療を行うのではなく心筋梗塞や脳卒中などの大きな病気を予防するためにも定期的に健診を受け血圧やコレステロールに注意する、異常があれば先ず自分の食生活や運動の習慣を見直していき必要な時は血圧やコレステロールの治療をすることはとても重要だと私は考えています。健診の結果を見てみると年齢が50歳を超えてくると血圧や糖尿病の値が異常値を示すことが多くなっています。また女性も閉経による女性ホルモンの減少でコレステロール値が急に高くなってきますので注意が必要ですね。

 最後に危険因子が有るからといって必ず病気になるわけではありません。しかし危険因子が沢山ある時には注意が必要ですね。特定健診を受けるなどして自分の危険因子をチェックしてみましょう!当院では特定健診を随時受け付けております。予約の必要はないので(第1,3,5土曜日も特定健診を受け付けています)直接窓口で特定健診とお申し出下さい。

 

特定健診のお話し(平成25年7月)

 先月は急性心筋梗塞のお話でした。私は勤務医時代に患者さんが心筋梗塞などで入院されて初めて血圧やコレステロールなどの異常がわかるといった事を良く経験してきました。つまり高血圧やコレステロールの異常は実際に血圧を測ったり血液の検査をしてみないと分かりません。病気になってから治療を行うのではなく心筋梗塞や脳卒中などの大きな病気を予防するためにも定期的に健診を受け血圧やコレステロールに注意する、異常があれば先ず自分の不適切な生活の習慣を直していくことはとても重要です。今月は特定健診についてお話ししようと思います。

 特定健診はメタボ健診とも呼ばれていますからご存知の方も多いかと思います。40歳以上の国民健康保険や協会けんぽなどに加入している人(その家族)が対象となります。健診の方法は先ず受診券と保険証を持ち健診を受けることの出来る病院・クリニックを受診します。当院では予約の必要はないので(土曜日も特定健診を受け付けています)直接窓口で特定健診とお申し出下さい。受付後に簡単な書類への記入及び質問事項にお答えいただきます。その後に医師による診察と身長体重・腹囲・血圧の測定と尿検査・血液検査などを実施して終了です。時間は他の診察の混み具合にもよりますがだいたい1時間以内で終わります。健診の結果は後日来院していただき病院にて医師から説明があります。血液検査の主な検査項目は肝臓・コレステロール・中性脂肪と血糖及び糖尿病に関するものです。健診の結果を見てみると年齢が50歳を超えてくると血圧や糖尿病の値が異常値を示すことが多くなっています。また女性も閉経による女性ホルモンの減少でコレステロール値が急に高くなってきますので注意が必要ですね。

特定健診の目的は高血圧や高コレステロールそして糖尿病などの生活習慣病を予防・早期発見し早めに対策・治療をすることで心筋梗塞や脳卒中などの病気を減らそうというものです。
 2008年に特定健診が始まりましたが現在の受診率が約30~45%と残念ながら目標の65~80%を大きく下回っています。血圧やコレステロールが高かったり糖尿病の気があるなどど言われたものの、忙しくて放置していませんか?現在日本では糖尿病とその予備軍をあわせると約2000万人にせまる勢いです。糖尿病は初期の段階では自覚症状はほとんどありません。しかし糖尿病を放置して時間がたっていくと脳梗塞や心筋梗塞にかかる危険が糖尿病のない人に比べて数倍高くなります。糖尿病や予備軍の早期発見にとても重要なのが血液検査や尿検査を受けることなのです。

 特定健診をいつ受けるか悩まれている方、いつ受けるのですか?そう今でしょう!!いつまでも健診を先送りしないで下さいね。

 

狭心症と心筋梗塞(平成25年6月)

最近ある女優さんが心筋梗塞(しんきんこうそく)になったという報道がありました。まだ若く健康なイメージのある方なのにどうして?と思われた方も多かったのではないでしょうか?今月はその心筋梗塞と狭心症についてお話ししようと思います。

 心筋梗塞は心臓の病気の一つですね。梗塞(こうそく)とは血液の流れが途絶える結果、血液から酸素・栄養を受け取っていた心臓の一部の筋肉が死んでしまうことを言います。梗塞の範囲が広い場合は重症となり時に突然死になることもありますがこの女優さんのように軽症ですむ場合もあります。心臓は血液を全身に送るためのポンプとして1日10万回も動いています。その心臓自身も血液から酸素や栄養を受け取らなければ動くことはありません。心臓に血液を送る役目をしているのが冠状(かんじょう)動脈です。冠状動脈は成人で直径2~3ミリの血管で心臓を包み込むように心臓の表面を走っています。この冠状動脈に病気が起きて胸痛などの症状が出てくる場合を狭心症と言います。この狭心症にも二つのタイプがあります。一つは心臓の冠状動脈に動脈硬化が原因で狭い場所が出来てしまい血液が十分に流れなくなることで胸痛などの症状が起きる狭心症です。典型的な症状は坂道の歩行や階段の上り下り、興奮した時や排便・入浴時、寒い空気に急に当たった時などに胸痛を生じるもので労作性(ろうさせい)狭心症と呼ばれます。この胸痛つまり胸の症状も人それぞれです。胸がしめつけられる・圧迫される・押さえつけられるようなと表現されることが多いです。症状の続く時間は数分程度が一般的で歩行などの動作を止めることで胸痛などの症状が直ぐに良くなっていきます。チクチクした痛みや瞬間的な数秒間の痛みは狭心症でないことが多いのです。しかし場合によっては狭心症の痛みが首やあご・歯の痛みとして感じる事もありますし、胸痛が持続しておさまらない時は急性心筋梗塞の可能性があるので注意が必要です。もう一つのタイプの狭心症は心臓の血管に狭いところはないのですが突然冠状動脈が発作的に細くなることで症状が出てくるものです。このような狭心症をれん縮(れんしゅく)性狭心症と呼びます。日本人に多いタイプの狭心症で発作は就寝時などの早朝に起こる傾向があり女性・喫煙者に多いという特徴があります。それではどういう人が心筋梗塞や狭心症になりやすいのでしょうか?それは危険因子と呼ばれ、高血圧・糖尿病・喫煙者・高コレステロール・肥満そして家族の中に狭心症や心筋梗塞にかかった方がいるような場合は狭心症になる可能性が高くなるのです。

 ここまで狭心症や心筋梗塞についてお話ししてきました。皆さんは狭心症が重症になると心筋梗塞になるのかなあと思われたかもしれませんが違うのです!急性心筋梗塞になった人の実に約8割の方が全くの初めての胸痛で、以前に前ぶれのような症状が見られなかったということなのです。心筋梗塞は直ぐに治療を必要とする病気なので注意が必要ですね。今回お話しした心筋梗塞や狭心症に関して7月18日(木)午後から苗穂・本町地区センターで講演する予定です。質問のコーナーもありますから興味のある方や出席を希望される方は同地区センターまでお問い合わせ下さい。

 

タバコと禁煙治療のお話し

 一昨年のタバコの値上げや最近の健康ブームそして公共機関などの禁煙の広がりでタバコを止めたいなと思っている方も多いのではないでしょうか?今日からお話しする内容はタバコによる健康への影響から薬による禁煙治療についてまでを数回にわたりお話ししていきたいと思います。

 皆さんは受動喫煙というのを聞いたことがありますか?タバコが喫煙者の体に悪いことは解っていても他人の健康にまで影響するのをご存知でしょうか? 受動喫煙とは喫煙者でなくても、喫煙者の近くに居たり喫煙のある環境に居ることで体の中にタバコの煙を吸い込んでしまうことを言います。タバコの煙は二つに分けられ、(1)喫煙者が吸い込む煙と(2)火のついたタバコの先から出る煙があります。受動喫煙の場合主に(2)のタバコの先から出る煙を吸い込んでいるのですが、実はこの煙りには喫煙者が実際に吸い込む煙より高い毒性を持ったガスが含まれているのです!家で換気扇の下でタバコを吸うという方が多くみられますが、タバコの煙は実は家中に広がっているのです。ではベランダで吸うと大丈夫なのでしょうか?決してそうではありません。家の中ではタバコを吸わないという喫煙者の親を持つ子供の尿を調べたところタバコの成分が高濃度に見つかったという調査があります。これはベランダで吸っても隙間から煙が入りますし、喫煙者はしばらく肺の中にたまった煙を吐いているので、子供の前で吸わないでも子供には受動喫煙が起こっているのです!

 最近飲食店でも禁煙のところが増えていますが、では受動喫煙を防止するとどうなるのでしょうか?実は心臓の病気が減ったというアメリカの調査結果があるのです。アメリカのヘレナという地域で法律によりバー、カジノ、レストランなどを全面的に禁煙にしたところ狭心症・心筋梗塞で救急車にて搬送される患者が60%も減りました。興味深いのはその後喫煙者の反対で禁煙を解除したところ狭心症の急病患者数がまた増えて元に戻ってしまったのです。この結果から、ヘレナではレストランなどでは法律で全面禁煙とすることになりました。また病気の人が減っただけではなくバーで働いていた人の咳や痰の症状が店の中の禁煙により良くなっているのです。

 禁煙の場所が増えると受動喫煙で病気になる人を減らせるのです。またタバコを吸う人も喫煙場所が減ることで不便だから禁煙したいと思うようになります。大勢の人が集まる場所を禁煙にすることはタバコを吸う人はもちろん、吸わない人の健康をも守ることになります。

 当院では禁煙治療を行っています。禁煙は自己流で行うよりも薬を使い医師からのアドバイスをもらう事で禁煙の成功率があがるのですよ!予約の必要はありませんが初回の診察に時間がかかりますので余裕を持ってご来院下さい。

 

タバコと病気のお話し

 前回はタバコと受動喫煙のお話しをしましたが、今回は喫煙と病気の関係についてお話しします。みなさんは北海道の喫煙率が高いと言う事をご存知でしょうか?男性は国内で四番目に高く、女性は1位なのです!男性の喫煙率は減少傾向ですが、女性特に中高年の方は以前高いままなのです。タバコの中にはニコチンや一酸化炭素など200種類以上の有害物質が含まれると言われています。タバコが喫煙者の体に悪いことは解っていても具体的にどんな病気になるのかは意外に知らないようです。煙が肺に入るので肺ガンはなんとなく解っても他の病気はどうでしょうか?先月の話で受動喫煙を防止することにより狭心症が減ったアメリカの町の事を覚えていますか?そうです!心臓の病気・脳梗塞など動脈硬化による病気が喫煙により増えてきます。高血圧に関しては喫煙がある人は喫煙しない人に比べて血圧が下がりにくいのです。例えば喫煙した直後は血圧や脈拍の数が上がります。ですから血圧の治療中の方で主治医から家庭の血圧を測るように言われている時は、喫煙直後の血圧測定は避けた方が良いですね。ガンに関しては肺ガンだけではなく、喫煙は喉や食道、子宮ガンなど多くのガンの危険になるのです。またあまり知られてはいませんが糖尿病や不妊症・妊娠合併症の危険が高くなり、手術後の経過に悪い影響を与えることが知られています。喫煙がどれだけ身体に悪い影響を与えているか解っていただけたと思います。

 最後にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)についてお話ししましょう。COPDとは別名タバコ病・タバコ肺と呼ばれタバコが原因で肺に炎症が起こり肺の構造が徐々に壊れていき、空気の出し入れが難しくなり息がしにくくなる病気です。COPDは病気の初期の段階では息切れやせき・たんが続くと言ったありふれた症状ですが、進行すると体を動かした時に苦しくなり最終的には呼吸不全で死亡してしまいます。ただ息切れは歳のせいとか、せきやたんは風邪が原因だと思われがちなので病院を受診せず放っておかれる患者さんも多いのですが、COPDは現在世界の死亡原因の4位となっている病気で注意が必要なのです。そしてこのCOPDの患者さんの90%以上に喫煙歴があるのです!タバコを吸う方でせき・たんが長引いたり階段を上がる時に息苦しいことがある時は病院を受診して下さい。胸のレントゲンや肺の検査(肺年齢検査)により早めの診断が大切です。

 当院ではCOPDの早期発見の為の肺年齢検査や薬による禁煙治療を行っています。禁煙は自己流で行うよりも薬を使い医師からのアドバイスをもらう事で禁煙の成功率があがるのですよ!禁煙外来に予約の必要はありませんが初回の診察に時間がかかりますので余裕を持ってご来院下さい。次回はどうして禁煙が難しいのか、その理由となっているニコチン依存症に関してお話しする予定です。

 

ニコチン依存症のお話し

 今まで2回にわたりタバコによる受動喫煙や病気のお話しをしてきましたが、今回はなかなかタバコを止められない原因はニコチン依存症という病気である、という話しをしたいと思います。

 なぜタバコはなかなか止めることが出来ないのでしょうか?禁煙しようとする意志の力が弱いことだけが理由ではありません。タバコの煙に含まれるニコチンは実は麻薬にも劣らない強い依存性を持っているからなのです!現在喫煙の習慣の本質は単なる嗜好ではなくニコチン依存症という、治療の必要のある病気と考えられています。ではニコチン依存症とはどういう状態なのでしょうか?喫煙するとニコチンが数秒で脳に達しドパミンという快感を生じさせる物質が作られます。このドパミンが喫煙者に快感を与えると同時にもう一度タバコを吸いたいという欲求が生じてきます。これがタバコを繰り返し吸う習慣となります。ニコチン依存症になると、吸えない時間が長かったり禁煙して体にニコチンが入らなくなると血液中のニコチンが減りイライラや落ち着きがないなどのニコチン切れ症状(禁断症状)が出てきます。喫煙の理由を聞くとストレスを解消するために吸うという喫煙者が多いのですが、イライラの正体は仕事や家庭のストレスが原因ではなく実は習慣的にタバコを吸っているがために生じているニコチン切れ症状(禁断症状)の可能性が高いのです。

 よく禁煙する前に“軽いタバコ”に変えるという人がいます。しかし根本まで吸ったり本数を増やすなどして調節してしまうため体内に入るニコチンの量は変わらないとされています。またタバコの本数を減らすことから始める方もいますが“軽いタバコ”と同じように吸い方を調節してしまいますし、健康にとってメリットは期待できません。安全な量の喫煙など存在しないのですから!実はタバコの本数を減らすことは余計にタバコから離れにくくなるのです。朝一番のタバコを思い出してください、普段のタバコより美味しく感じませんか?これは眠っている間はタバコが吸えないので体がニコチン切れとなり、朝の1本目でそのニコチン切れが解消されるため大きな満足感があるためです。このことはタバコの本数を減らしても同じです。吸う間隔が長くなると体がニコチン切れとなりイライラなどの禁断症状がより強くなります。そして次の1本のタバコで症状が解消されると満足感も強くなり余計にタバコから離れにくくなるのです。

 禁煙の近道はスッパリと吸うのを止めることです!意志の強さでやめられる方もいるでしょうが、ニコチンの離脱症状には個人差が大きく過去に禁煙し辛くて数日しか持たなかった方などは薬を使用した禁煙治療をお勧めします。禁煙は自己流で行うよりも薬を使い医師からのアドバイスをもらう事で禁煙の成功率があがるのですよ!当院では禁煙治療を行っております。禁煙外来に予約の必要はありませんが初回の診察に時間がかかりますので余裕を持ってご来院下さい。次回は禁煙の薬による治療についてお話しする予定です。

 

禁煙の薬のお話し

 今まで数回にわたりタバコによる病気やニコチン依存症のお話しをしてきましたが、今回は禁煙のための薬についてお話しします。なぜタバコを止めることが出来ないのか、それは禁煙しようとする意志の力が弱いことが理由ではなくニコチン依存症という病気が原因でした。タバコに含まれるニニコチンは麻薬にも劣らない強い依存性を持っているからです。ではこのニコチン依存症を克服するにはどうしたらいいのでしょうか?ニコチン依存症では禁煙を始めて体にニコチンが入らなくなると血液中のニコチンが減りイライラや落ち着きがないなどのニコチン切れ症状が出てきます。このニコチン切れ症状を抑えて禁煙を手助けしてあげるのが禁煙の薬の役目となります。

 禁煙の薬には飲むタイプ(錠剤)、湿布のように貼るタイプ(ニコチンパッチ)そしてガムのように噛むタイプ(ニコチンガム)の3種類があり、これらの補助剤はニコチンを含む製剤とニコチンを含まない製剤に分かれます。ニコチンを含むのがニコチンパッチとガムで一部は大衆薬として薬局などで医師の処方箋なしで購入出来て気軽に禁煙を始められる利点があります。しかしニコチンガムは普通のガムと同じように噛んではダメでまたタバコを吸いたい時に使用するため仕事中などは噛めないなど不便な事もあります。ニコチン製剤は十分な量を使用しないと効果が無く、間違った使用方法では十分な効果が得られないので医師などのアドバイスを受けるのが理想です。これに対してニコチンを含まない禁煙補助剤が現在主流となっている飲み薬による禁煙治療です。この薬にはニコチン切れ症状を抑える効果に加えてタバコからの満足感を減らしタバコの味を変える効果があります。飲み薬による禁煙治療は医師による診察が必要で、診察の結果ニコチン依存症と診断されると健康保険を使って治療が始まります。薬は徐々に量を増やし1日2回食後に飲みます。薬を始めてから8日目に禁煙を開始しますが薬の効果でタバコによる満足感が得られず又いつもとタバコの味が変わりスムーズに禁煙できたと禁煙に成功された方が話されています。通常3ヶ月間薬の服用を続けこの間に計5回の医師の診察があります。薬により禁煙の成功率は2~3倍に上がり、50~70%の方が禁煙に成功しているようです。

 禁煙の近道はスッパリと吸うのを止めることです!意志の強さでやめられる方もいるでしょうが、ニコチンの離脱症状には個人差が大きく過去に禁煙し辛くて数日しか持たなかった方などは薬を使用した禁煙治療をお勧めします。禁煙は自己流で行うよりも薬を使い医師からのアドバイスをもらう事で禁煙の成功率があがるのですよ!当院では禁煙治療を行っております。詳細は当院ホームページでもご覧頂けます。あなたも禁煙治療に挑戦しタバコのない生活を体験してみませんか!?